第2話 本人の知らぬ処で決まるそれ

 真っ先に目に飛び込んで来たのは、手紙のトップに大きく印字された

「月刊 〇〇〇(誌名) 新連載 ご担当のお願い」

 の文面タイトルでした。


 はあ?

 初耳、いや、初目でした。

 いつの間にこんな話になっていたの?

 私は何も知らない、聞いてない。

 これ以前の打診なんて、何もありませんでした。


 しかし、そこには

 ・新連載 タイトル

 ・連載の意図、目的、趣旨

 ・字数

 ・締切

 ・連載期間

 ・稿料@1本当たり金額


 ご依頼のご意向があること自体、この手紙で初めて知ったのに、そこには上記がとても細かく丁寧に綴られていました。

 驚いた、参った、と思わず呟きました。


 これまでの少ない経験からも、これだけ詳細に書かれているという事は、かなり本決まりのご依頼であることは明白です。

 既に編集会議を通っていると察せられます。

 そうでなければ、そもそもこのご依頼状も来ていないだろうと思いました。


 溜息が漏れました。


 一瞬、来年度の年間スケジュールが脳裏を過ります。 

 同時に、感謝が膨れ上がりました。私が全く知らないうちに知らないところで、私の名前や過去の記事を取り上げて、私を推したり、議論のテーブルに載せて下さった編集者さんがいらしたということに、心が熱くなりました。

 いやあ、ありがたやありがたや。


 手紙の最後には、掲載見本誌として最新号を同封されていることと、諾否(承諾するか否か)の返答は同封のハガキかメールしていただきたい、とありました。


 そう言えば、この出版社は、初めて単発記事のご依頼を頂いた時もこの方式でした。今の時代、ハガキで諾否を送る人なんていらっしゃるのかしら? と思ったのを覚えています。


 どうしたものか。

 仕事部屋のカレンダーを見ました。

 最新号が出たばかりということは、恐らく次号の校了まで最も期間があるだろうし、編集者さんと電話でお話するには最も時間が取れるタイミングではないか、と読みました。


 そして、お手紙にあった電話番号に、編集者さん宛にお電話してみました。

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