第143話 転生者は異世界で何を見る? -魔工都市エキドナ-
「な……なんじゃこりゃ」
俺は魔工都市エキドナの入口へと続く行列に紛れながら、エキドナの街を外から見た姿に圧倒されていた。
街を囲む壁は十メートルほどの高さがあり、荘厳なる鈍色の輝きを放っている。
もしやこの壁は金属製なんだろうか。
壁の向こうにはいくつもの煙突のような細長い物体が聳え、ところどころで輝きを放っている。中には煙を吹き出しているものもあった。
なんつーかこれは……、魔工都市というより魔晄都市じゃねーか!
「うわ……、すごいね……」
「ほえー」
瑞樹はポカンと口を開けており、フィアは純粋に驚いているようだ。
俺たちからすると見慣れない風景に見えるが、フィアからはどうだろう。日本の風景と異常さで言えば同じと感じているかもしれない。
ボケっとしている間にも俺たちの乗る乗合馬車はエキドナへの入口へと近づいていく。
目の前に広がる街の様子に、自分たちの乗る馬車が異様なものに思えるから不思議だ。
門が近づいてくるが、特に順番待ちで並んでいる様子はない。
国境を越えて来る人間はそこまで多くないのだろう。国交もほとんどないという話だったし。
とうとう守衛が守る門までやってきた。そこで馬車は一度停止して、人や荷物のチェックを行うようだ。
「そこで止まれ!」
守衛の声と共に一時停止する乗合馬車。
馬車を停止させた御者が客席を振り向いて告げる。
「皆様も一度降りていただけますか」
その言葉に従って降りるが乗客は俺たち三人だけだ。
国境街から実際に国境を越えてくる人間はそうそういないようで、エキドナ行の馬車を手続きに行った際にも人が誰もいなかったのだ。
そのため前日に予約をして初めて、翌日に馬車が出るといったシステムになっていて、普段から馬車の行き来があるわけではないらしい。
「「すげー」」
馬車の小窓から覗く風景とはまた違って見える。驚いた俺と瑞樹の感嘆の声がハモった。
「手続きをするので身分証を持ってる者は出していただきたい」
エキドナ産の魔道具のおかげで魔物や盗賊に襲われても撃退できると言って、護衛の冒険者もついていなかった。
まさか銃みたいな道具だとは思わなかったけど。
消費魔力もそこそこ多いらしく、個人で持ってる人はほとんどいないとの話だったが、すごく興味がある。
これも街で探してみるか。
何にしろ今は身分証だな。とりあえず冒険者ギルドのカードでいいのかな。
「ほい、これでいいか?」
フィアと瑞樹もそれぞれ自分のギルドカードを差し出している。
「ああ、問題ない」
守衛さんがギルドカードを受け取ると、手に持っていたバーコードリーダーのようなものをかざしてカードを読み取っている。
うーむ、まさに機械製品っぽく見えるなぁ。
国を跨ぐだけでこうも変わりますか。ほんとに国交断絶してんだな。
「よし、通っていいぞ」
「ありがとうございます」
どうやらこっちの国では入街税などはないようだ。身分証の確認だけで入れた。
俺たちはまた馬車に乗って門をくぐり、街の中へと入って行った。
「ほい、じゃあ馬車はここまでだ。利用してくれてありがとさん」
街へ入ってほどなくして馬車駅についた御者は、座席の俺たちを振り返ってそう言った。
「ありがとうございます」
フィアが代表して礼を述べると、俺たちは街の中へと一歩を踏み出した。
それにしても街の中もすげーな。そこかしこに機械製品っぽいものが置いてある。
地面にしても土が見えているところはあるが、主要道路は石畳のようなもので綺麗に舗装されていた。
数は多くないが、俺が求めてやまなかった『乗り物』もたまに通りかかるようだ。
さすがに街中なのでスピードは控えめだったが、馬車より速いのは確実だ。
一人乗り用のバイクっぽいものが多かったが、中でも『車』と呼べるものもあった。
「すごいですね……」
呆気に取られてしばらく道路を行きかう物体を眺めていると、ぽつりとフィアが呟いた。
おっと、ボケっと眺めてるわけにもいかんな。せめて宿くらい取らないと。
「先に宿でも取るか」
「そうだね」
宿を取ったら冒険者ギルドだな。……一応カードが使えたんだし、ギルドくらいあるよな?
国を超えた機関らしいし、同じ世界のはずなのになんとなく別世界な気がして不安になってきた。
乗合馬車の御者さんに聞いた宿へと向かうことにする。
街並みは石造りの建物と金属製っぽい鈍色をした建物が半々だろうか。
だが以前いた街と比べて、高さのある建物が多いが、それらはすべて鈍色を放っていた。
「……ここ?」
そして宿に到着する。
……間違ってないよね? 御者さんに聞いた道をたどってきたし、確かに外観も聞いた通りと言えなくもない。
見上げるとそこには高級ホテルのような外観の立派な建物があった。
高級宿を希望したけど、マジか。
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