第107話 転生者は異世界で何を見る? -救援-
「な、何だ……!?」
今日の瑞樹は慌ててばっかりだな。いろいろありすぎてもうすでにいっぱいいっぱいなんだろうけど。
「さて、悲鳴が聞こえたけど、どうしようか?」
「えっ……?」
「そうですね……」
俺とフィアで瑞樹を見つめる。この森自体、出てくるモンスターはそんなに大した奴は出てこない。俺たち二人ならなんとでもなるんだが、レベル1の瑞樹がいるとなると話は別だ。
「どういうこと? 助けに行かないの?」
というわけで、「お前が一番弱いんだよ」という旨をかいつまんで説明する。
「守りながら戦えないこともないだろうけど、相手が何なのかわからんからな」
「……だったら!」
「ここのモンスターは大したことないと聞いてるが、何も相手はモンスターとは限らないし」
歩みは止めずに会話は続く。血抜きした場所から離れることも大事だ。
「で、もう一度聞くけど、どうする?」
「……」
「きゃあああぁぁぁぁぁ!!」
逡巡する瑞樹をよそに、再び悲鳴が聞こえた。敵対する相手の物音は何も聞こえない。
ハッとする瑞樹。その瞬間に決意が固まったのか。
「助けに行こう!」
ぶっちゃけ俺も、助けられる可能性のものを放置したとなると寝覚めが悪かった。
自分が一番危険にもかかわらず、助ける決断をした瑞樹に対して俺も安堵したのかもしれない。
ニヤリと口元を歪めると瑞樹に告げた。
「じゃあ行くか」
足元を土魔法で歩きやすくしながら悲鳴の聞こえた方向へと走る。
そして今のうちに瑞樹に補助魔法をこれでもかとかけておく。アイテムボックスに入っていた軽めの初心者防具を装備させてはいるが、それだけでは心もとないのは確かだ。
走り出してすぐに【気配察知】が反応する。
これは……数が多いな。五人のパーティを三十体近くのモンスターが取り囲んでるように思う。
死んだ生き物の気配は感じることができないので、襲われているのが五人パーティということを祈るのみだ。とは言えこの五人の気配はついさっき感じたことのあるものだ。たぶん誰も死んでないだろうとは思う。
「はぁ、はぁ……、ちょっと……、待って……」
瑞樹はもうすでに息も絶え絶えだ。体力なさすぎだろ。これは本格的にパワーレベリングを考えないといかんか……。
「フィア……、瑞樹を頼んだ。ちょっと先に行ってる」
「……はい。気を付けて……」
後ろを振り返って頷くと走るスピードを上げる。さすがに瑞樹に合わせて走るのと比べ物にならないくらいスピードが出る。
遠目に聞こえていた金属同士を打ち合う剣戟や叫び声が次第に大きくなり、あっという間に現場の隅に到着する。
目の前は少し開けた場所になっており、五人の冒険者パーティが三十体ほどの二足歩行する犬に囲まれて戦闘中だった。これが例のコボルドかな……。
――――――――――――――――――
【コボルド】
Lv:2
HP:128/128
MP:5/5
STR:98
VIT:76
AGI:102
INT:89
DEX:187
LUK:24
――――――――――――――――――
適当に【鑑定】してみるが、やはりコボルドのようだ。
コボルドは群れるけど大したことないって聞いてたんだけどな……。冒険者パーティがすごく不利に見える。
しかしよく見ると二足歩行する犬の中に、一際大きな個体が混じっているのが見て取れた。こいつが原因かな……?
――――――――――――――――――
【コボルドキング】
Lv:12
HP:2042/2042
MP:143/176
STR:312
VIT:345
AGI:115
INT:154
DEX:201
LUK:21
スキル:
【統率Lv2】
――――――――――――――――――
おお、キング強ぇな。なんかスキルも持ってるし。これは助けに入らないとやばいかな?
だけど邪魔するなって言われたしなぁ。まぁ聞いてみればいいかな。
「おーい! 大丈夫かー? 助けは必要かー?」
さすがに大声を上げると冒険者とコボルド両方の視線を集めるが、それを隙ありと見たのだろうか、即座に返事が飛んできた。
「た、頼む! 助けてくれ!」
コボルドならば全財産を差し出せば助かると聞いていたのに、どうも助けを乞う声は激しく切羽詰まってるように感じる。
訝しんでよく見ると、すでに全財産を差し出しているのか、彼らの前には持ち物らしきものが積み上げられていた。が、未だに襲われているという状況のようだ。それで焦っているのだろう。
これもコボルドキングのせいかな?
「わかった!」
素手のままだと怪しまれるかもしれないので、冒険者ギルドで借りた木剣をアイテムボックスから取り出す。
そして承諾の言葉と共にコボルドの群れへと突っ込んだ。
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