第62話 モンスターズワールド -再会-
さくらと買い物をした翌日にはソーラーLEDライトが無事に自宅に届いたので、さっそくモンスターズワールドの世界へとやってきた。
前回こちらに来た場所は、商会の地下室だったので同じ場所に出現する。
アルブレイムさんにも地下室はまだ何も手を入れなくていいと言ってあったため、周囲の様子は来る前と変わったところはない。
扉を開けて階段を登るとガランとしていたはずの一階部分が見事に店舗としての様相に変わっていた。
異世界での自宅兼店舗を購入してまだ三日目のはずであるが、アルブレイムさん仕事が早すぎだろう。
感心しながら一階の店舗を見回していると、二階からアルブレイムさんが降りてきた。
「おお、会頭殿! えらい
か、会頭? こないだまで「マコト殿」呼びだった気がするけど……、慣れない呼び方だとなんだか居心地が悪い。
「アルブレイムさん、ただいま戻りました。
……にしてもすごいですね。もう店舗みたいになってるじゃないですか」
「ええ、そらもう並べる商品を見せてもろた時に受けた衝撃は忘れられんもんでしたからね。早う開店せなあかんと思てがんばりましたわ」
胸を張って言うが、見せた商品って二種類のLEDライトだけだよね?
いやまあそれで他の商品も期待したってことなのかな?
「そ、そうですか……。
ああ、今からお城にLEDライトを納品に行くんですが、アルブレイムさんもどうですか?」
むしろ一緒に来てくれると助かります。一人で城に行くとか緊張するし。
「ホンマでっか! ほんならお伴さしてもらいます」
というわけでお店に鍵をかけて、俺とアルブレイムさんの二人連れ立って城へ向かった。
結論としてはアルブレイムさんを連れて行って正解だった。城門受付は観光客も来る場所なので問題なく通過できたのだが、城の正面玄関は二度目とは言え壮大すぎて一人でくぐれる気がしない。
城の御用達商会として登録されているので普通に通れるんだがそれでもね……。
それにしてもどこにいけばレオンハルト王に会えるんだっけか。前回会った応接室に行くだけでいいとは聞いていたけどどういうシステムになっているのやら。
「会頭殿、こっちでっせ」
若干行先に迷っているとアルブレイムさんが勝手知ったるなんとやらのごとく先に行ってしまう。
慌てて追いかけてしばらく奥へ行くと、両脇を騎士が警備している通路が見えてきた。
……なんか見覚えのあるひとだな。
「マコト殿!」
なんて思っていると騎士に声を掛けられた。
よく見るとフィアを送り届けた際に出会ったリリエルさんだった。
「お久しぶりです」
「陛下はいてはりますか?」
丁寧にお辞儀をするリリエルさんに、アルブレイムさんは直球で用件を確認している。
「はい、ご案内します」
アポなしだけどそれでいいのか? 自分からの訪問は今回が初めてになるが、いささか疑問が沸きあがってくる。
めんどくさい手続きの後に「では後日」とかなるんじゃないかと想像していたんだが。
実は国王って暇なのか?
くだらないことを考えているとどうやら到着したようで、リリエルさんがひとつの部屋の前で止まるとノックしていた。
「入れ」
中からレオンハルト王の声がしたのでリリエルさんが扉を開けてくれる。
「失礼します」
後に続いて部屋に入ると、レオンハルト王にアリエル王妃がくつろいで紅茶を飲んでいる。どうやらフィアはいないようだ。
「おお、マコト殿にアルブレイムも。久しぶりだな」
「お久しぶりです」
数日しか経っていないけど久しぶり感が半端ない。なんでだろうな?
「まだ三日しか経っていないが、もう商品を仕入れてきたのか?」
「はい。なので研究用のLEDライトを持ってきました」
やはりというかなんというか、科学製品の一端をこちらの魔法技術でもって解析したいという話をレオンハルト王からされていたので持ってきたのだった。
国王が座るソファの前にあるテーブルに、色とりどりのソーラーLEDライトと手回し充電のLEDライトをアイテムボックスから五個ずつ取り出して置く。
ぜひ研究者には頑張ってほしいものだ。魔石から電気が取り出せるようなことができれば、この世界でもいろいろと捗りそうだし。
「……こちらは?」
見慣れない手回し充電の付いた方を指さして尋ねるレオンハルト王。
「こちらはソーラーと違って、このようにハンドルを回すと充電されるようになっています」
説明のために二人の前で実演する。こっちのほうが太陽の下に数時間も放置する必要もないし、楽じゃないかな。
一分ほど充電すれば三分は点灯するみたいだし。
「なるほど。サンプルが多ければ解析もしやすいやもしれんな」
一通り確認したあと、レオンハルト王はリリエルさんにLEDライトを託すと研究所に持っていくように指示する。
「マコト殿、フィアにも会ってやってくださいな」
一息ついたときにアリエル王妃が苦笑しながら告げてくる。確かに婚約者認定をされたのだから、会っておかないとまずいのか。
「ああ、そうだな。まったく困った娘だ。
どれ、私が呼んでこよう」
レオンハルト王自らソファから立ち上がり部屋を出て行った。
「ふふ……、どうにもいつもと違うフィアを面白がってるみたいですわね」
なんというか、「お前に娘はやらん!」といった雰囲気でもなく、嫁入り前の娘を面白がる父親というよくわからない構図にどう反応していいかわからない。
「あっははははは!」
そしてさっきから静かだなーと思っていた、いつもやかましいアルブレイムさんがいきなり笑い出す。
このオッサンもよくわからない。
「レオはよっぽど会頭殿の事を気に入ったようやな!」
レオってレオンハルト王のことだよね!? やっぱりこのオッサン何者!?
リアクションに戸惑っていると、ノックもなくいきなり扉が開いた。
「マコト!!」
「フィア!?」
驚いて振り返ると、そこに立っていたのは満面の笑みを浮かべたフィアだった。
相変わらず今日もかわいいな……とか考えていたら、急に走り出したフィアが俺の胸に飛び込んできたのだった。
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