第61話 モンスターズワールド -マコト2-
私は寝ていて気付いていませんでしたが、夜中に襲い掛かってきた賊からマコトに守ってもらったんでした。
それを知ったとき、今と同じような気持ちに……、胸がきゅんと締め付けられる感じがしたんです。そのあとでマコトが操る美しい魔法を見せられて、その気持ちが強くなっていった気がします。
一時的にマコトの部屋に戻ったときに、覚悟を決めてマコトと一緒に寝ようとしましたが、まさかこちらの世界のベッドがこんなに気持ちいいものだとは思わず、妹さんの部屋で寝てしまったのです。
……いえ、逆にマコトが起きているときに行っても追い返されたかもしれません。目が覚めてマコトの部屋へ入りましたが、寝ている間に添い寝できたのでむしろ成功でしょうか。
マコトと一緒のベッドにいると胸がドキドキして全然寝られませんでした。男性のベッドに入るなんて……、やはり緊張していたのでしょうか。
でも隣から感じる温もりは、なぜか安心できました。
夜も明けて、空が明るくなってきたときにマコトが寝返りをしたのですが、その時に胸を触られてしまいました。というよりもマコトの手で胸を包まれています。
「――っ!!?」
思わず声が出そうになりましたが、マコトを起こすわけにもいきません。顔が熱くなっていくのがわかりますが、ここは我慢です。
でもなぜか嫌悪感はありませんでした。マコトを逃がさないと覚悟を決めたからでしょうか。そっと手を自分の胸からどけようという気もこの時は起きませんでした。
「――んあっ、ぁん」
むしろ胸にぽかぽかとした思いを抱きながら考えていると、不意にマコトの手が動いたのです。思わず声が出てしまいました。
ちょっと……! マコト! 何をするんですかっ!? や、やめてください!
反射的に思った言葉はなぜか口から出てくることはありません。
「うわっ!?」
私の声にマコトが目を覚ましてしまいました。私の胸から手が離れていきます……。
なぜか残念に思う感情が沸きあがってきます。
ああ……、もうちょっとマコトに……触れていて欲しかった……、のかな……?
「……んぁ、……おはよう、ございます」
なぜ残念に思ったのか、自分でも自分の感情がわかりませんでした。
それからというもの、マコトはあっさりと問題を解決してしまいました。歴史書があったとは言え、素晴らしい解決スピードです。
でもやっぱり、マコトが活躍するところが見れなかったのが残念でなりません。
マコトの部屋に戻ってから「すまほ」というものを使わせてもらいました。遠くの人と会話ができるなんて、素晴らしいです!
私も欲しくなったので、でんわができる「すまほ」をマコトにお願いしてみました。だって、これでいつでもマコトとお話しができるじゃありませんか!
最初は渋られましたが、しっかりと両親の許可をもらって、自分で仕事をすれば買ってもらえることになったんです!
こんなにうれしいことはありません!
早速お父様とお母様の元へと帰り、許可ももらって、目的であるマコトとの婚約まで漕ぎつけたのです。
そうなのです。嬉しいはずなのです。……なのになぜこんなに胸がもやもやと、苦しいのでしょうか。
過去の出来事を思い返してみても、この気持ちの理由がわかりません。
自分の気持ちに悩んでいると、私の部屋に誰かが来たようです。ノックの音がしました。
「フィアよ、入ってよいか」
お父様の声です。
「ええ、大丈夫です」
扉が開かれると、いつもよりも上機嫌な表情のお父様が入ってきました。
「……どうした? そんなに浮かない顔をして」
私の顔を見るなり上機嫌な顔が心配そうな顔に変わります。……そんなに不機嫌な顔でしょうか?
「お父様……。いいえ、嬉しい気持ちでいっぱいのはずなのですが……。なんだか胸が苦しいのです」
私の言葉にお父様が顔を少し緩ませて答えます。
「はははっ、そうかそうか。それなら安心するといい」
「えっ?」
……お父様は私のこの気持ちの答えを知っているのでしょうか?
「マコト殿が帰ってきたぞ」
「ほ、本当ですかっ!?」
お父様の言葉に胸に溜まっていたいたもやもやが一気に吹き飛びました。
「ああ、もう向かいの部屋に来ておるぞ。フィアも待ち遠し――」
最後までお父様の言葉を聞くこともなく、私は駆け出しました。
お父様の脇を通り抜けて開いたままの扉をくぐると、廊下の反対側の扉をノックもせずに勢いよく開けます。
「マコト!!」
扉の向こうにマコトの姿を見つけると、吹き飛んだもやもやのかわりに胸がドキドキとしてきました。
ああ、そうか……。そうだったんですね……。
ようやく、この胸のもやもやの正体がわかった気がしました。
「フィア!?」
振り返って驚いたマコトの顔を見て、顔がニヤけてしまうのが自分でもわかります。
居ても立っても居られずに走り出すと、マコトの胸へと飛び込みました。
そのまま両手をマコトの背中へと回します。マコトの胸へと頬を寄せると、ドキドキしているのですがとても落ち着きます。
もうここまでくれば迷うことなどありません。笑みを深くして自分の気持ちと向き合います。
うん……。悪くないですね……。
私は……、マコトを……、好きになってしまったんですね。
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