3-9/フレンズ・アゲイン
「どう? サイトできた?」
翌朝、眠い目をこすりながら自分の席に座った俺の背中をシャーペンの先でつついてきたのはもちろんハルヒだった。
「出来たには出来たが、お前が書いた文章と連絡先を載せてあるだけでそこには有益な情報は何一つないぞ」
これは少しも謙遜ではなく、実際にそうなのだ。本当はミステリー研究会の理念だとか活動だとか、募集案内だとかそれっぽいのを書くべきところなのだろうが、相変わらず俺はミステリー研究会をどういう部活にするのか、方向性が打ち出せずにいた。試しに部長殿にも「長門、何か書きたいことあるか?」と水を向けたのだが、「何も」と大変短い答えが返ってきただけだった。顔も上げやしない。
そういうわけで、アクセス解析ツールの組み込みだとかアクセスカウンタの設置だとかそれっぽいことをひととおりやったところで俺のホームページ作成にかける情熱はガソリン切れとなった。うーん、正直手抜き以前の状態である。ちなみに今現在俺がしきりに目をこすっているのは、徹夜でホームページ作成の続きをしていた・・・・・・わけではもちろんなく、家に帰ってからついついスマートフォンでWeb小説サイトに投稿されているミステリー小説を読みふけってしまったからだりする。
「今はまだそれでもいいのよ。あの文章と連絡先さえ載ってれば第一段階はオッケー」
「第一段階はって、次の段階があるのか?」
「内緒」
「内緒ってお前、何を企んでるのか知らんが、ミステリー研究会として活動するんなら、ちゃんと部長の了解を得てからにしろよ」
「じゃあ、平の部員には内緒」
じゃあって何だ。じゃあって。
「とりあえず誰かからコンタクトがあったら必ずあたしに報告してよ。ホウレンソウは社会人の常識よ」
ホウレンソウってのは、部下が報告連絡相談しやすい環境を整えようっていう管理職の心得であって、部下に報告連絡相談を求めるものじゃないんだぞ。いや待てそれ以前に俺はハルヒの部下ではない。そもそも俺もハルヒもただの高校生だろうがよ。
「返事は?」
「へいへい。連絡があったなら」
怪文書が掲載されているだけの意味不明なホームページの管理者にコンタクトを取ろうとするやつがいるとも思えないがな。俺は心の中で呟いてから、イッキ読みの快感と引き替えにした眠気をあくびとともにかみ殺す。
――やっぱり日が変わってから『ミックスベリー殺人事件』は無謀だったか。
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