3-3/フレンズ・アゲイン
基礎代謝のピークは十代半ばから後半にかけてだという。息を吸って吐いて授業中に寝ているだけでエネルギーを消費するのだから生きるというのも難儀なものだ。腹も減るし。
ともあれ昼休みである。俺はいつものように国木田、谷口と机を寄せ合って、弁当箱を取り出すことにする。このときばかりは母親に感謝したくなる。朝起きて飯食って身支度を整えるだけでもしんどいというのに、毎日こうやって弁当を作ることまでしてくれるのだから。
うん? しかし今日の弁当はいやに軽いな。俺は訝しく思いながら弁当の包みを開け、すぐにまた箱をぱかりと開けた。
中には入っていたのは、たった一枚の紙きれだった。
――ごめん、寝坊した。 母
紙面を裏返すと、セロテープで五百円玉が貼り付けられている。これで何か買って食べろということらしい。
「そいつはまた随分と斬新な弁当だな」
早速谷口が食いついてきた。
「わざわざお弁当箱に入れる辺りは奥ゆかしい……のかな?」
国木田も何を言ってやがる。
「朝のうちに言ってくれた方がよっぽどありがたいんだがな」
「直接は言いにくかったんじゃない? キョン、基本お弁当は残さず食べるし」
毎日ではないけれど、自分で弁当を作ることもある国木田にそう言われると、俺も納得するしかない。
「ふん、普段弁当を作ってもらっているありがたみを噛みしめるこったな」
炊き込みご飯のグリンピースを弁当箱の端に避けることに必死な谷口にそう言われると、無性に腹が立ってくる。というかこいつは少し黙った方が良いと思う。
「どうする? 食堂に行くなら付き合うけど」
俺は弁当箱をしまいながら、しばしの間考える。そうして顔を上げると「えー、めんどくせーよ」と言うバカを無視して国木田の方に向き直った。
「あ、いや、今日は購買のパンにする。悪いが先に食べていてくれ」
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