2-2/カメラ!カメラ!カメラ!
旧館に戻ってくると、タイミング良く吹奏楽部が演奏を始めたようだった。筒井康隆原作のアニメ映画のテーマソングだ。コンクールの課題曲ではなさそうだが、野球部の応援で使うにはちょっとしんみりしてしまうな。まぁそうでなくとも北高野球部は毎年初戦でしんみりしてしまうことが多いらしいが。
俺は北高球児に対して失礼なことを考えながら、だらだらと廊下を進んだ。放課後の旧館は相変わらず騒々しい。吹奏楽部だけではない。演劇部にコーラス部、落語研究会、弁論部。音を発することに魂を燃やす連中が、ブレーメンの音楽隊もかくやというほどの熱心さでもって、ブレーメンの音楽隊もかくやというほどの無秩序な騒々しさを作り上げている。ミステリー研究会の座敷童もよくまぁこんな環境で平然と読書ができるよなと、改めて感心する。
いやしかし、待てよ。俺は心の中で呟いてからふと足を止めた。
何かが足りない。いや、騒々しいことには変わりないのだが、つい一週間前まではこんなものではなかった。
何だ。何が足りない。
俺は立ち止まったまま腕を組んで考える。我ながらくだらないことを気にするものだと思わないでもないが――。
そうか。軽音学部だ。今週に入ってから、連中の爆音ライブがぴたりと聞こえなくなったのだ。ちょっと前にツインギターになって音量がさらに破壊的なことになったから、てっきり部員が増えたものだと思っていたんだが。音楽性の違いで解散でもしたのかね。
とりあえず違和感の正体を突き止めたことで満足した俺は、ミステリー研究会へと急ぐことにした。
部室の戸を開ける前に、一応は軽くノック。
「貼ってきたぞ」
言いながら部室の戸を開けると、中には長門と――それにもう一人。
「なんでアンタが」
それはこっちの台詞だ。
殺意によく似た鋭い眼差し。髪をばっさり切ってからはすっかりトレードマークになっている山吹色のリボン付カチューシャ。そして形の良い薄桃色の唇。
見間違えるわけもない。長門の隣に座っていたのは、あの涼宮ハルヒだった。
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