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 控室にいると、ドアの外で明るい声がした。


 私達は慌てて、カーテンで仕切られた衣装ルームに隠れる。控室に入って来たのは、新郎新婦だった。カーテンの隙間から、若き日の両親を覗き見る。


「どうだった?俺の誓詞」


「ばっちりだったね。トチるかと思ったよ」


「とちるわけないだろ。何度も練習したんだから」


「まじで?誓詞を練習したの?」


 クスクスと笑う母、父は照れくさそうに笑ってる。


 あの父が、誓詞奏上のために自宅で練習したなんて想像がつかない。


 それに、両親のこんな晴れやかな姿も……。


 23歳の父と20歳の母。

 若い両親の微笑ましい姿に、覗き見ているこちらの方が恥ずかしくなる。


「新婦様お待たせしました。披露宴では角隠しは取り外しますね。メイクもお直ししますのでこちらへ」


 美容師さんにメイクを直してもらった新婦は、花嫁衣装を整え新郎と共に控室を出る。


「今から披露宴かな。もも、私も見たいよ」


「よし、俺達も行こう」


 美容師さんがお色直しの準備をしている間に、私達は衣装ルームから抜け出し披露宴会場へと向かう。会場を探していると廊下で留袖を着用した女性に呼び止められた。見知らぬ女性だが、その優しい面影にどこか見覚えがあった。


「お嬢さん達はさっき挙式会場にいらした方ですよね……。綾のお友達ですか?」


 私達が挙式会場にいたことを、この女性に見られていたようだ。


「はい。披露宴会場と間違えて、挙式会場に入ってしまいました。すみませんでした」


「そう。そそっかしいところは綾とよく似てますね。披露宴会場はあちらですよ」


 優しい女性はクスリと微笑み、母を『綾』と呼び捨てにした。


 もしかして……この女性は、私のお祖母ちゃん?


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