54
榮倉は父の苗字。
守田は母の旧姓。
挙式会場に
その名前を聞き、私は驚きのあまり声を上げそうになる。
新郎の名前は
間違いなく、新郎新婦は私の両親だ。
「ねね、これはもしかして……」
「もも……。行こう」
新郎新婦は指輪の交換をし、
両家が
私達が迷い込んだのは、両親の結婚式!?
これは夢……?
私達は洞窟の中で死んでしまったの?
ドキドキと鼓動は音を鳴らし、目の前にある現実が理解出来なくて、私は激しく動揺し混乱している。
「ねね、榮倉蒼はねねのお父さんだよな。守田綾はねねのお母さんだ。紘一さんは生きていたんだ!挙式会場に紘一さんがいるんだよ!」
「新郎新婦が……お父さんとお母さん……。お祖父ちゃんの未来は変わってない。お祖父ちゃんは生きていたんだね。時正君は……?鉄道寮のみんなは……?お祖父ちゃんに聞いてくる!」
控室を飛びだそうとした私の腕を、桃弥君が掴む。
「待て、俺達は未来から来たんだ!ねねのご両親は俺達のことを知らない。今逢えば大騒ぎになる。今日はお父さんとお母さんの結婚式なんだ。様子を見よう」
「もも……。わかった」
祖父(守田紘一)が生きていた。
きっと時正君も鉄道寮の仲間も、お世話になった時正君のお婆ちゃんも富さんも、この時代で生きているはず。
控室の壁には日捲りカレンダーが掛けてあった。カレンダーは1981年1月15日……。
終戦から……36年後の未来……。
原爆投下により破壊され消滅した町。
“『戦後70年は草木も生えない』”と言われた広島が、復興を果たし人々は今もなお生きている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます