弐
桃弥side
11
「臭せぇな。俺より臭いって、毎日風呂に入ってねーの?」
「毎日風呂に入れないよ。節水しないと。今は大変な時期なんだ」
「節水にも限度がある。父ちゃん残業みたいだから、先に風呂入っていいよ」
「でも…。知らない家でお湯をもらうなんて。着替えもないし…」
「俺のジャージ貸すから、ほら、さっさと入れよ。どうせこんな時間から、帰れねーだろ。母ちゃんの親戚なら泊まればいい」
「……ありがとう」
大崎時正、本当に母の遠い親戚なのか?
父が帰宅しないとよくわからないが、薄汚れた体から漂う異臭に、思わず風呂に押し込める。
時正はオドオドしながら浴室を覗き込み目を丸くした。
「綺麗な風呂じゃ。薪で沸かさんのんか?これはなんじゃ?」
シャワーを不思議そうに見つめる時正に、俺は頭からシャワーの水をかける。
「ひゃあ、冷たい!雨じゃ、雨が降りよる!どうして風呂に雨が降るんじゃ!」
「雨?お前、シャワー見たことねーの?薪ってなに?風呂はガスか電気で沸かすに決まってんだろ。山奥じゃねーんだから。どんな田舎に住んでんだよ。脱いだ服は洗うから、洗濯機の横の籠に入れろ」
「電気洗濯機があるんか?母ちゃんはいつもたらいであろうとった」
「たらい?川からどんぶらこってヤツ?昔話じゃねーんだから、お前んちは洗濯機もねぇのかよ。どんだけ貧乏なんだよ」
時正は珍しそうに洗濯機を眺め、恐る恐る蓋を開け中を覗き見る。洗面所にある洗面台もドライヤーも初めて目にしたようだ。
「桃弥君ちは金持ちじゃのう。こがあに家電製品の揃うた家を見たことがない。ここは西洋文化で溢れとる。米国からこうたんか?まさかお父さんは米軍関係者…!?」
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