独白

執行猶予

 美樹のやつが姉貴どもに余計なことを言うから、こんなことになったんだ。


 あの姉貴どものことだから、この執行猶予は絶対だ。


 来年の俺の誕生日までに、黒崎さんに告らないと、大変なことになる。


 ヤバい。ヤバすぎるだろ、おい!


 俺はパートだぞ、パート。フリーターから、社会保険の部分だけマシなパートタイマーだぞ。

 いくらなんでも、無責任すぎる。


 勢いだけでなんとかなるって、美樹と結婚したときに思い知らされたんだ。


 そうさ、後悔してるさ。

 後悔しない人生なんて、ありえねーだろ。

 俺のことは自業自得だからって、時間がかかったけど、諦めたさ。こうして、人並みの生活送ってるしな。


 ただ、美樹の人生の1年分はもう取り戻せない。

 向こうの親に土下座して、美樹の専門学校の学費負担して、なんとかあいつの人生だけは修正起動できたけど、それまでの1年はどうしようもない。

 取り返せない。


 誰かから聞いたことあるけど、後悔には2種類あるらしい。


 取り返しのつく後悔と、取り返しのつかない後悔。


 まさに、俺は取り返しのつかない後悔をしてしまったわけだ。



 どうしてこうなったんだ。


 黒崎さんと一緒にいると楽しいから、思わせぶりなこと言ったりはしたさ。

 なんか、そういう時の黒崎さんの反応が面白いから、顔を見たらついいっちゃうけどさ。


 でも、もし黒崎さんが『わたしのこと、好き?』とか言ったら、ちゃんと付き合おうとは思ってるんだよ。

 ――結婚とかは、また別問題だけど。


 ホントに、どうしてこうなった。

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