結。

 謎の集団に追われていたサーバルちゃんとかばんちゃんの前に立ちふさがったその巨大な物体。

 それはジャパリパークで猛威を振るっている謎の敵、セルリアンであった。

 だが……


「……何か手に持ってるね」

「紙?」


 よく見るとセルリアンは触手の先に四角い紙を持っていた。


「……絵はがき?」

「エハガキ?」


 サーバルちゃんは初めて聞く単語に傾げた。

 しかしかばんちゃんは自分で言っておいてそれが何なのか判っていない。

 判っていないが、蒼白した顔でその場にしゃがみ込んでしまった。


「……ポストカード……シルクスクリーン……ラッセン……分割払い……ううっ、頭が……」

「かばんちゃんしっかりして! 何? ポストカードって何? 分割払いって何?! 急いで逃げないと――ああっ!」


 かばんちゃんが往生しているうちに、洞窟の奥から件の集団が追いついてきた。

 集団は二人の行く手を阻んでいるセルリアンを見て怯んだ。


「……エウリアン」

「……エウリアンだ」

「エウリアン? セルリアンじゃないの?」


 サーバルちゃんは集団が怯えながら呟く、初めて聞く名前に困惑した。初めて尽くしの連続でサーバルちゃんもとうとう頭が処理オーバーを起こしその場に立ち尽くしてしまう。野生の本能すら対処しきれない事態であった。


『絵ヲ買ッテ』


 新種のセルリアンが集団に気づく。すると触手の先にあるポストカードを集団のほうへ伸ばして始めたではないか。


「――かばんちゃん! 今だ逃げよう」


 萎縮していたサーバルちゃんの野生の本能は、危機を前に僅かに見えた活路を見逃さなかった。

 サーバルちゃんはへたり込んで虚ろ気な顔でいるかばんちゃんを担ぎ、新種のセルリアンが集団へ詰め寄り始めた事で広がった横へ飛び退いた。

 幸運はそこで終わらなかった。そこへ、ラッキービーストが運転するジャパリバスが駆けつけたのである。


『乗って』

「ボスぅぅぅぅぅ!!」


 サーバルちゃんは堪らず号泣しバスに飛び乗る。二人を乗せたバスは急発進し、その最大の危機から脱する事に成功した。

 ジャパリバスのバックミラーには、新種のセルリアンの触手に次々と絡め取られていく集団の姿が映り込んでいたが、恐怖に震える二人は決して振り返ろうとはしなかったし、振り返ったとしても決して同情などしなかっただろう。


「な……なんだったの……あそこ」


 しばらくして、ようやく我に返ったかばんちゃんはあの奇妙な山が見えなくなって安心する。


『“あきはばらちほー”はジャパリパークの黒歴史』

「え?」

『ジャパリパークの空いた区画に世界で人気のあった街を再現したが、危険な生命体も再現してしまったので封鎖していた。あの集団はビックフレンズ。危険な生命体を引きつけるために棲まわせている』

「「は、はあ」」


 二人にはラッキービーストが相変わらず何を言ってるのかさっぱり判らないままだった。


「も、もうこりごりだよあんな怖いところは……」


 そう言ってサーバルちゃんは床に寝転がって大きく伸びをした。


    ※    ※    ※    ※    ※    ※


「早くあの子を追いかけなきゃ行けないのに!」

『絵ヲ買ッテ』

「尊い」

「ケモミミ尊みある」

「萌え」

「アライさんんんん何とかしてぇぇ」


 サーバルちゃんたちが脱出してから半日後、同じように“あきはばらちほー”に紛れ込んでしまい、エウリアンとビックフレンズに取り囲まれてしまったフェネックちゃんとアライグマちゃんがどうなったのかはまた別の機会に。



         完


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「あきはばらちほー。」 arm1475 @arm1475

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