第3話〔結〕

 メロスは山賊に襲われていた。

「お前の命を置いていけ。俺らが欲しいのはそれだけだ。」

「あの暴君の使いだな。私は急いでいるんだ…!」

ああ、なんということだ。韋駄天、なぜ私の俊足を阻むか。メロスは疲弊しきっていた。


山賊の持つ棍棒をひょひょいと取り上げあっという間に倒したは良いものの。

口は血の味と唾液が混ざって気持ちが悪い。

ついにはメロスは倒れた。

…すまないセリヌンティウス…。私は約束を守れそうにない。もう体がピクリとも動かない。だがメロス、私は良くやったのだ。正義のもと走ったのだ。だから許してくれ…。

        ●●●

「おーい、ディオニス、もうすぐで処刑の時間だな。」

「やはりメロスは、小僧は来なかったな。」

ディオニスは嘲笑した。

しかしディオニスはセリヌンティウスを殺す気は毛頭無かった。


なぜならセリヌンティウスといるのは楽しかった。数日の付き合いだが。


「だがセリヌンティウスよ。…最後くらいはスマホ弄るなよ。」

セリヌンティウスは「すまぬ。」と言って〔モンスト〕を終了させた。


ディオニスはこう考えていた。

もしもメロスが来なければセリヌンティウスは生かし、我が王宮に住まわせよう。


メロスが来たときはメロスを殺し、セリヌンティウスを逃がす。

これで良い。


のこりメロスの猶予は20分を切っていた。

早く来ないかな、メロス…〔ディオニスチャンネル〕の配信遅くなるからさぁ…。

        ●●●

残り5分を切った時だった。

[メロスが来たぞ!!私はここだ!]

ディオニスはその怒号に驚いた。

「むむ、来やがったか。」


形だけでも縛ったセリヌンティウスは涙を流した。

「め、メロス!」

「せ、セリヌンティウス!!」

メロスとセリヌンティウスは処刑台で見つめ合った。

「しかし、だ。セリヌンティウスよ。私は悪い夢を見た。道を征く途中、諦めてしまおうとさえ考えた。そんな私は君と素直に抱擁ほうようできない。私の頬を殴ってはくれないか。」

メロスがそう言うと、セリヌンティウスは腕をしならせ刑場にめいっぱい響くほどのパンチをメロスにかました。

「メロス、私もだ。この3日間のうち少しだけ君を疑った。来ないのではないかと。このままじゃ君と素直に抱擁できない。わたしがメロスを殴ったようにわたしを殴ってくれ。」

これもまた良い音の打音が響いた。


そして二人は抱擁し合った。

続けざまにメロスは言った。

「さあ!ディオニスよ!わたしを殺せ!」

ディオニスは首をふった。

「真実の愛、友情とは誠に存在するものだったのだ。わたしの負けだ。…1つ欲を言えばそなたらの仲間にしてくれないか?」


セリヌンティウスは頷いた。

「よせ、もう仲間だろ。」

セリヌンティウスとディオニスは抱き合った。


メロスは激怒した。

「なぜ、仲良くなっている!?」


おわり

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走れセリヌンティウス 原田和正 @kiyosiko12

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