第12話

 パルシュは、声をあげて道を走っていった。

「おい、待てよ! 治ったと思ったら元気すぎ!」

 ラルシュは必死で弟の後を追う。

「捕まえた!」

 鬼に捕まったパルシュはキャッキャと笑い声を上げる。

 ちょうどその時、木から一羽の鳥が羽ばたいて、ラルシュは空を見上げた。

「……まさか、本当に天使様だったなんてな」

 アレイルの銀色の翼と、それから腐った翼を思い出した。

 地下鉄で見たときは、ほとんど骨だけになってしまった彼の翼を見て、悪魔の羽だと勘違いしてしまった。本当に悪い事をしてしまったと思う。あれは、あの腐った翼は、ずっと人間の傍にいてくれた証拠だったのに。

『彼とはな、昔会ったことがあるんだよ。お前ぐらいの年ごろにな』

 そうおじいちゃんがこっそり教えてくれたのは、アレイルが去っていった後のことだ。

『ひょっとしたら、お前が大人になったころ、まだ会えるかも知れないぞ』

 もしそうなったら、いっぱい色々な話をしよう。

 楽しかったことも、悲しかったことも。きっと、アレイルは笑って聞いてくれる。その頃には、パルシュももっと大きくなっているだろう。

 その時が今から楽しみだ。

 白い鳥は、晴れ渡った空を飛んで行った。

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RESTART 三塚章 @mituduka

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