第十四話 次のステージへ

 ホストOSが準備出来たところで、まずは、公開用サーバが先かな? 正直、ファイルサーバは設定ファイル取り出せたお陰で、すぐできるしね。


 まずは、リソースの見積もり。


 ディスクは、少し増やして 30 GB ぐらいにして、メモリは 4GB 全部はやばいかもしれないから、 3GB に留めて、でも、仮想 CPU は 4 つ割り当てちゃえ。


「あと OS は、やっぱり元の CentOS 5 にしといた方が無難よね」


  CentOS 7 に上げてしまいたいところだけど、ミドルウェアのバージョンが変わるとサルベージした設定やらデータがそのまま使えない可能性がある。


 なら、今は CentOS 5 で構築しておいて、ちゃんと動くようにしてから改めてバージョンアップするのが近道よね、うん。


「だったら、サクッとインストールしちゃいましょう」


 仮想環境のインストールには、 virt-install というコマンドを使うんだけど、幸いこれは xen も同じ。だから、パラメータだけ調べればいけそうな感じ。


 色んなサイトの先人の知恵を、公式の情報と照らして検証し、パラメータ設定方法は簡単に解った。


「じゃ、やっちゃいましょうか」


 ネットワーク経由でインストールするつもりだから、 USB メモリとか ISO ファイルとかは不要。


 テキストエディタに打ち込んで何度も確認したコマンドを、ホスト OS に接続した putty のコンソールにペーストする。


virt-install \

--name sabae \

--ram 3072 \

--disk path=/var/lib/libvirt/images/rod.img,size=30 \

--vcpus 4 \

--os-type linux \

--os-variant rhel5.11 \

--network bridge=br0 \

--nographics \

--location 'http://ftp.jaist.ac.jp/pub/Linux/CentOS/5.11/os/x86_64/' \

--extra-args='console=tty0 console=ttyS0,115200n8'


「うんうん、順調順調」


 インストールの最初にネットワーク設定をしたら、問題なく指定したサイトからファイルがダウンロードされ、インストールは順調に進んでいく。


 そうして、表示されたメッセージを見て気付く。


「あ、そっか。 VNC で繋げば、 GUI でもいけるんだ」


 CentOS のインストーラは、コマンドラインで実行しても、途中からリモート接続で GUI ~要するに、マウスとか使って操作できるグラフィカルユーザインターフェイスでもインストールできるのだ。


 そのために用いる仕組みが VNC ~ Virtual Network Computing よ。


 端的に言えば OS に依存しないリモートデスクトップね。 Windows のリモートデスクトップ接続は対応した Windows にしか繋がらないけど、 VNC なら Linux のデスクトップにだって Mac のデスクトップにだって接続できるのだ。


 あたしのメイン PC の Windows 10 には、当然 VNC クライアントの UltraVNC ぐらいは入ってるから、インストーラに表示された接続情報を指定して、サクッと接続。


「出てきた出てきた」


 そこには、見慣れた CentOS 5 のインストール画面が表示されていた。


 パーティションは深く考えずにサクッと典型的な切り方をして、インストールするパッケージ選択画面へ。


 色々プリセットはあるけど、色んなことやらせてたせいで、どうもピッタリなのがないのよね。


「えっと、マストなのは apache と MySQL と bind と……」


 必要なソフトをピックアップしていくが、


「まぁ、足りなきゃ、足せばいいし、前に進みましょう」


 最低限必要そうなものだけ選んで、インストールを進めることにする。サーバは、極力余計なものを入れないのがセオリー。足りない状態に足すのが、基本なのよ。


「ここまでくれば、後は待つだけ、か」


 高校生が間違ってレジに持っていくと二つ名になりそうな缶ジュースを空けて飲みながら、待つことしばし。


「完了、ね」


 あっけないぐらいあっさりと、 CentOS 5 が仮想環境に入ってくれた。


「ここからセットアップだけど……それは次のステージってことにして、今日はこの辺が潮時かな?」


 そういえば、まだ、晩御飯も食べてなかった。ちょうど、近所のスーパーで半額のシールが貼られる頃合いハーフプライスラベリングタイムだから、買ってこようかしらね。


 部屋着の上にコートを纏い、スーパーで半額のチキン南蛮弁当と特売の缶ジュース(未成年お断り)を買ってきて、夕食を済ませる。


 それからお風呂に入ってサッパリして、いつのまにか PC デスク周りにたまった空き缶をゴミ袋にまとめ、布団に入って眼鏡を外した。

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