第十三話 静かに揺れるカーソル
「 KVMよね、やっぱり」
一息吐いて、 STRONG 云々書かれた缶ジュース(果汁入ってるからジュースよね?)を飲みながら、仮想環境の構築方法を確認する。
仮想環境には xen を長らく使ってきたけど、 CentOS は KVM を採用してるのよね。だから、無理に xen を使うより KVM を使った方がいいのは自明。
「まぁ、 xen と似たようなものだしね」
xen は準仮想化、って、大雑把に言えば仮想化して動かす OS の方にも何らかの細工することで上手いこと動かそうって仕組み。細工が必要な以上、そのまま仮想化するわけじゃないから、準ってとこかしらね。
一方で、 KVM は完全仮想化と呼ばれるもので、動かす OS には一切の細工はなくそのまま動かすことができる。その代わりに、パフォーマンス的に準仮想化より不利、と言われていたのも今は昔。現在では、 CPU 側の仮想化支援機能を用いることで、パフォーマンスの問題はほぼ解消されてるわ。裏返せば、支援機能を持たない CPU じゃ上手く動かないってことになるけど、大丈夫、このサーバは支援機能積んでる Core i3 が入ってるからね。
そんな訳で、 KVM を使ってみよう、という次第。これがまた、仕事にも活きるしね。
「……大筋は、 xen とそんなに変わんないのね」
色々とドキュメントを読んでみての結論がそれだった。
「 virt-install とかは同じだし xm コマンドが virsh コマンドになって少々書式が変わってるぐらいで、考え方は似たようなものね」
なら、いけそう。
「 virt-install は、ネットから直接もいけるし、さっきこのサーバ入れる時に嵌まったようなことにならないためにも、そっちから入れるべきよね」
とか、考えてたんだけど、
「あ、ブリッジ接続のネットワーク設定が先、か」
ブリッジ接続というのは、その名の通り、仮想環境のネットワークをそのままホスト側のネットワークに繋ぐための橋渡しをする設定ってところね。
外側からは、独立したサーバに見えるってわけ。
他にも、仮想環境から外には出れるけど、外側からはホスト OS のネットワークまでしか辿り着けない NAT やらあるけど、ま、興味ある人は調べてみたらいいと思うわ。
二本目を開けながら、ネットワーク設定に入るんだけど、
「 /etc/sysconfig/network-scripts の下……じゃないのよねぇ」
CentOS7 は管理コマンドが一新されていて、設定ファイルなんかも変わってる。
ネットワーク設定も、 NetworkManager という仕組みに統合されて nmcli というコマンド経由でやるのが基本みたい。
「要は、物理的なネットワークデバイスにブリッジ接続を割り当てて、元の接続設定を削除して置き換える、ってことかな?」
偉大なる集合知、インターネット上の様々な情報を収集して、ブリッジ接続の作り方を確認する。
「こういうとき、コマンドラインは便利よね」
コンソールの中で、静かに揺れるカーソルを肴に缶ジュースを飲みながら、そんなことを思う。
何せ、画面のどこそこになんたらの値を入れてどこそこのボタンを押して設定を反映してとかややこしいことはする必要はなくて、決まったコマンドを淡々と入力していけばやりたいことが実現できちゃうんだから。
そうして、調べて得た知識を早速活用すべく、コマンドを入力していく。
「デバイス名が、ens32 みたいだから……」
nmcli con add type bridge ifname br0
nmcli con add type bridge-slave ifname ens32 master bridge-br0
nmcli con delete ens32 && reboot
こんなところね。
設定反映のために再起動をかけたので、起動を待つ。
「うんうん、設定できてそうね」
再起動してきたサーバに入って確認すれば、 br0 という名前で ens32 に紐付いたブリッジ接続ができあがっていた。
「あとは、これを仮想環境に割り当てればいいってことよね?」
パインの缶ジュースを飲み干し、いよいよ仮想サーバのインストールに入る。
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