第一章 希望なんてどこにもない
「……呆然としてても、仕方ないわね」
深夜二時過ぎ。
あたしは、動かないサーバを前に仕事モードに頭を切り替える。
まだまだ若くて経験は浅くて若い(大切なことなので二回言いました)ながらも、客先でのトラブルで、それなりに修羅場なら潜ってきている。
こういうときのセオリーとして、冷静に問題の切り分けを行うのが先決だ。
OSが読み出せないということは、ディスクが正常に稼働していない、ということは確か。
でも、ディスクが動かない=ディスクが死んだ、と結論づけるのは早計よ。かつて、起動しないサーバに直面したとき、ディスクは無事でもマザーボードのディスクコントローラの方が死んでいたことがある。
そう、大本が死んでいたらそもそもディスクが正常に動かないのは道理。まだ、ディスクが死んだと結論づけるのは早い。
それに、ブザーを鳴らすのはマザーボードであることが多い。
そうよ、きっと、ディスクは無事。こういうときは、ディスクを取り出して、USB変換アダプタとかで直接PCに繋いだらデータが読み出せたりするものよ。あのときも、そうだったしね。
少し元気になってきた。
「さぁ、
何はなくとも、ディスクを取り出さないとお話しにならない。
サーバに繋がったケーブル類を全て外し、ドライバ片手にネジを外す。キューブ型のケースの蓋を開け、ディスク固定具の戒めを解き、SATAと電源のケーブルを外しし。
サクッと、サーバの内蔵3.5インチハードディスクを取り出す。
「じゃ、メインPCに繋ぎますか」
ケチったので遅いけれども、 SATA->USB2.0 変換機ぐらい、乙女の嗜みで持っている。早速、クローゼットから引っ張り出してくる。
「読み込んでね」
祈りを籠めて、お立ち台型の変換機へサーバから取り出したハードディスクをセットし。
「え、この、音」
聞こえてきたブザー音に、困惑する。
「これ、もしかして、モーター音?」
嘘でしょ?
ディスクが、回ってない?
マザーボードの警告ブザーだと思ってたの、この音?
そうだとしたら。
認めたくないけど。
「やっぱり、ディスク、死んでる、の……」
そう、結論づけるしかない。
希望を打ち砕かれ、あたしはその場に崩れ落ちた。
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