3章 『洞窟』 Dark Zone
雨が降り、風が吹き、大地が削られる。更に何者かが気も遠くなるような長い年月をかけ、それを広げていった。
日の光も差さない暗闇の城。人が家屋を作り、自分たちの住みかを広げていくのに対し、人以外の生物は、逃げ込むように洞窟へ姿を隠した。
やがて洞窟には魔物が巣食い、そこに目をつけた権力者や犯罪者たちの、財宝の隠し場所となった。そして所有者たちがいなくなったとき、それらは洞窟に眠る宝となった。
雨が降り、風が吹き、大地が削られる。更に何者かが気も遠くなるような長い年月をかけ、それを広げていった。
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「明かりを付けるぞ……」
メラが松明に火を灯す。燃え上がる炎は、剥き出しになった険しい岩を露にした。
「本当に洞窟じゃな……しかし広い」
「でも、人が通った跡がある。見ろよ、いかにもなやつだぞ」
メラが地面を松明で照らす。湿った泥には、人の足形が付いていた。
「噂の魔法使いか」
「おそらく」
足跡を辿り、慎重に前へ進む。
「しかし、どうもよく分からないのじゃが……魔法使いなんて、ゴロゴロいるんじゃないのか? こういうのじゃその、珍しくは無いんじゃ」
大剣を杖代わりに、私は足元を確かめながら歩く。
「他の国はどうか知らないが、この国では魔法を『悪魔の力』と考え、調べたり、覚えようとする事を禁じている。宗教的な問題でもあるんだろ」
「それは、勉強したり練習すれば、誰でも使えるものなのか?」
「でもないな。魔法は魔族が使う力。人が簡単に使える代物じゃない……だとさ」
会話が途切れ、足音だけが響き渡る。慌てて私は会話を続けた。
「その、国を狙う男ってどんな奴なんだ?」
「元大臣。国政を担う一方で密かに魔法の研究をし、国を追われた男さ」
「国家転覆でも謀ったのか」
「さあな。王国では古株の人間と聞いたが、直接会った事は無いからな」
強い風が洞窟内を通り抜けるように吹き、松明の灯が強く揺れる。
「本人に会って、確かめるしかないのだな……」
「疑惑はさておき、国王は『倒せ』と命じた。要はボスキャラなんだろうよ」
「魔法か、やっぱり帽子から鳩を出したりするんじゃろうか」
「それは手品」
「……そうか」
一応ふざけたつもりだったのだが、あまりに冷静に返されてしまい、私は押し黙るしかなかった。
人が足を踏み入れない洞窟とあってか、少し進めば中は魔物の巣窟だった。大型犬ぐらいの大きさはあるであろう蜘蛛、コウモリ、蛇など。見慣れた生物が、見慣れない大きさで生息していた。
「自分より小さいってだけで、動物ってあんなに狂暴になるんじゃな」
「猫だって大きくすりゃ虎だろ、その分体格も体重も馬力も違う。デカいってのは、それだけで脅威なんだよ」
一体一体は力も弱く、また自慢の巨剣の力もあってか大抵一撃で倒せてしまう雑魚なのだが、一度に現れる数が多いのと、人間とは違う奇抜な動きに私たちは中々先に進めないでいた。
「あまり攻撃を食らうと、薬草尽きるよ」
時折攻撃を食らう自分を見かねて、無傷のメラが言う。見れば手慣れた様子で剣を振るい、敵を次々と片付けていく。
「お前さん、城から外に出たことがないんじゃ……」
「ゲームが好きでね、実戦経験がなくても、他のゲームの経験値でどうにかなんのさ。まあ見てな」
そう言うと、メラが剣で遠くにいる蜘蛛を差す。
「例えばあの蜘蛛、普段はああやってオレ達の周りをピョンピョン飛び跳ねる。だけどこっちに襲い掛かるときだけは、僅かに動きを止めるのさ」
蜘蛛は私達の周りをしばらく飛び、少し動きを止めたかと思うと、メラに飛び掛かった。メラは少し横に動くだけで、それを避ける。
「それと攻撃が終わったあと、隙だらけになるとかね。まあ、ザコキャラの基本だな。回避に自信がないなら防御したっていい。とにかく迂闊に手を出そうとせず、効率よく攻撃すること」
しばらく動かない蜘蛛に、メラが剣を突き刺す。すると蜘蛛は一撃で消滅した。
「実戦慣れ……ではなく、ゲームが上手いんじゃな」
「そういう事。孫がいるならゲームの定石ぐらい覚えておかないと、話にならないぜ」
孫とはまた違った、ゲームの達人の意見に私は素直に感心した。
「おおっ、宝箱じゃ!」
妙に敵が密集した地点を突破すると、洞窟にはあまりにも不似合いな、豪華な装飾の箱を見つけた。すぐさま駆け寄ろうとする私を、メラが片手で止める。
「何じゃ?」
「慌てるな爺さん、確かめたいことがある」
そう言ってメラは、足元にある石を拾い、箱に向かって投げ付ける。すると……。
「ジャアア!」
宝箱が突如奇声をあげ、口を開けて飛び掛かる。驚き、竦み上がる私を突き飛ばし、メラが剣で噛みつきを受けとめる。
「爺さん! デカいのを頼む」
言いながらメラが、箱を壁に叩きつける。慌てて私は大剣を振り下ろし、箱を粉砕した。
「ビックリした……これもその、定石か?」
「まあね。古風な罠だけど、高難易度のゲームと身構えて正解だった」
「大変じゃのう……」
私は急に疲れを感じると、その場に座り込んでしまった。
「休憩かい。付き合うよ」
「悪いね。しかし今の子供はこんな難しい遊びをするのか、結構疲れるのう」
「別に子供だけじゃないさ。いい歳した大人だって、ゲームはやめられないもんだよ」
メラが隣に座り、兜を脱いで一息を入れる。その素顔を見て私は驚いた。
「失礼、てっきり『男』かと」
「あれ、気付かなかった? まあたまに間違えられるけど」
清潔感のある短髪の黒髪に、低めだが芯の通った強い声。顔つきは整った美男子のようでいて、清楚な大人の女性にも見える。「中性的」それが彼女の第一印象だった。
「オレも一応社会人なんだけど、未だにゲームが止められない子供でね」
メラが両腕を精一杯伸ばす。意識して見ると、動作の一つ一つに女性の色気を感じさせる。年甲斐もなく恥ずかしい話だが今、私は彼女を魅力的な異性だと認識していた。
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「いやいや、若いのにしっかりしとるのう」
「そうでもないって」
休憩の間、彼女は私に現実世界での話をしてくれた。名は
「爺さんは水商売や、タメ口とか、そういうのは気にならないの?」
「別に年上だから敬語を使え、とは言わんよ。ワシゃ上司でも先輩でもないからな」
「珍しいタイプだね。老人ってもっと自己的で怒りっぽいと思ってたけど」
「人それぞれじゃろ。見ず知らずの人間にいちいち腹を立てるほど、わしは勝気じゃないよ」
もっとも、そう思えるのも自分が家族に囲まれた、恵まれた環境にいるお陰かもしれない、とは思った。
「それとお前さん、確かに言葉遣いは乱暴じゃが、ちゃんと人の目を見てハッキリと喋るじゃろ? 十分礼儀正しいんじゃないかな」
こうは言ってみたが、厳密に言えば少し違った。口調は丁寧だが嫌味な人間もいれば、乱れた言葉遣いでも好感の持てる人間もいる。純子はおそらく後者だった。ハキハキとした喋りは聞き取りやすく、話しやすさや親しみやすさはさすがホステスだと感心する。
「接客業として当たり前なんだけどなあ……そりゃまともに話も出来なくて、すぐクビになる娘もいるけどさ」
「いやいや、ちゃんと出来る人は立派じゃよ。学も将来、お前さんみたいな人と付き合ってほしいもんじゃ」
「それは……素直に誉め言葉として受け取っておくよ」
純子は表情を隠すように、兜を被り、立ち上がった。
「じゃ、そろそろ行こうぜ」
「そうじゃな……」
立ち上がったそのとき、誰かが走り去る様な、軽快な足音が洞窟内に響き渡った。私とメラは一瞬にして、表情を険しくさせる。
「さすがに向こうにはバレてるみたいだな」
「着実に追い詰めているとも取れるな、この先は?」
「拾った地図が正しければ、あとは一本道」
地図の通り、細くなっていく一本道を進むと、明らかに人の手で作られた木製の扉が現われた。
「いかにもって扉だな、もうボス戦だと思っていい。油断すんなよ」
メラが注意を促す。私は取っ手を握り、ゆっくりと扉を開いた。
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中に進むと広い空間へと出た。遠くに小さな机や寝具と思しき毛布、大量の見慣れない機械が見えるが、人の姿は見当たらない。
「誰もいない?」
辺りを見渡す私に、突如メラが叫ぶ。
「屈め!」
一瞬何の事か分からず、反射的に前を見ると、銀色に光る物体が私の目前に迫っていた。とっさに首を曲げるが、避けきれないまま、銀色の物体は私の頬をざっくりと切った。血は流れるが痛みはない。壁に突き刺さったそれを見ると、正体がナイフだとやっと分かった。
「爺さん!」
メラが松明を放り投げ、慌てて駆け寄る。
「侵入者だな? 国王様から話は聞いている……」
背後から男の声が聞こえると、ドアが勢い良く閉められた。
「しまった!」
メラは扉を開こうとした。押す、引く、蹴る。しかし、まるで最初からそうであったように、扉は空間に固定され微動だにしない。
「研究成果を狙う、盗賊が来ると」
また声が聞こえたかと思うと、私のこめかみにナイフが刺さる。慌てて引き抜くと、血が勢い良く噴き出した。
「うおっ」
現実なら即死の致命傷だが、幸いにもこの世界では痛手で済んでいた。すぐに薬草を患部にあてがい、止血と治癒を試みる。
「攻撃がどっから来るか分からん!」
「その前に! むき出しの頭を何とかしろ!」
メラが叫ぶ。私は鎧こそ着ているが、頭はむき出しだ。慌てて道具袋からロープを取出すと、ターバンみたいに頭へ何重にも巻き付けた。
「悪あがきだな……せいぜい怯えるがいい」
壁に張り付くように、遠く離れた所に男がいた。ボロボロのマントを翻し、痩せ細った体にはいたる場所にナイフが何本も括り付けられている。
元大臣という肩書や体格から見るに戦う人間には見えない。しかし見開いた強い視線と落ち着いた口調からは、森で対峙した巨人のような威圧感を感じた。
「お前さん、国王から聞いたってどういう事じゃ? 国を追われてここにいるんじゃ……」
「……なるほど。そういう事にされているのか、国王様らしい」
大臣の口ぶりに私は違和感を覚えた。
「何にせよ、ここを見られた以上死んでもらうぞ」
すれ違う様な会話を終えると、男が瓶のような物を取出し、床へ放り投げた。思わず瓶に目を凝らすと、不可解なことに瓶は地面にたどり着く前に消えてしまった。慌てて男に目を戻すと、男もまた姿を消していた。そして……。
「キャアアア!」
悲鳴に振り向くと、メラが火に包まれていた。
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ゴウトたちが洞窟にいる一方、キオの軟禁は続いていた。キオは自分が人質である事を薄々感付いていたが、兵士の人の良さもあってか、何となくその場に流されるように、大人しくしていた。
「……それで罰を受けて、それ以来ずっと黒い鎧を身に付けているって話だ」
「じゃあメラさんって、不良なんだ!」
「他の騎士は全員白い鎧だろ? 正しき者には白を、悪しき者には黒を。つまりは悪い事をした証で、特別視されてるって事だ」
見張りの兵士は、キオとすっかり打ち解けていた。
「おじさんはもうぼくを恐がらないね」
「そりゃ、最初は驚いたけど、中身が子供だからね」
「ふーん」
「何なら、ウチの子供の方がもっと厄介だし……」
言いかけて、兵士は口を止める。キオが明らかにうなだれていた。
「……お父さんが心配かい?」
「うん……」
「そうだよね……」
困り切ったキオを見て、兵士は立ち上がった。
「キオ。私をしっぽで殴りなさい」
「えっ?」
「部屋を出て、左に曲がれば中庭に出れる。城から少し北に、お父さんのいる洞窟があるはずだ」
「でも、おじさんが怒られるんじゃ……」
「子供はもっと、ワガママ言って親を困らせるものだよ。いいからやりなさい」
そう言うと兵士は、両腕を上げて防御の姿勢を取った。
「そう言えば、おじさんの名前まだ聞いてなかったね」
キオの言葉に、兵士は一瞬考え込む。そして伏し目がちになり、やっとの事で言葉を捻りだした。
「名前……名前はその……無いんだ」
「ないんだ……ナインダさん! ごめんなさい!」
キオはそう言うと、尻尾で兵士を殴り付けた。精一杯加減をしたつもりだが、兵士はいとも簡単に吹き飛ばされた。
(ナインダか……ナインダ……私の……名前……)
壁に叩きつけられ、薄れゆく意識の中、兵士は笑みを浮かべていた。
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洞窟での死闘は続く。燃え上がるメラを見て、ゴウトは叫んだ。
「転がれ! 火を消すんじゃ!」
言われるままに、メラが激しく地面を転げ回る。土にまみれて火は消せたが、見れば彼女の頭上に記された生命値は残り二桁にまで減っていた。
「やってくれたな!」
私は剣を持って男へ駆け寄るが、寸前でまたも姿を消してしまう。振り向けば、また遠く離れた場所に男が立っていた。
「爺さん、一人じゃ無理だ……」
「メラ、大丈夫なのか?」
「全然大丈夫じゃねえよ。まさか油をぶつけられて火までもらうとは……ナイフに気を取られ過ぎた」
剣を杖に、メラがよろめきながら立ち上がる。痛覚こそないが肉体は確実に傷ついている。それがゲームの性質上、動きに制限がかかる様だった。
「すぐ消える敵に、一瞬で目の前に来る攻撃。タネも仕掛けもない手品みたいじゃが、どうする?」
「手品はタネと仕掛けがあってこそだ。あいつの魔法も半分は手品みたいなもんだ……とりあえず足は止めるなよ」
弱ったメラが歩き始める。私もそれに合わせた。
「よく見れば攻撃しては消えての繰り返しだ。多分、瞬間移動と攻撃が同時にできないんだと思う。もしそれが出来るなら、オレたちは今頃『海賊危機一髪』みたいに串刺しになってただろうからな」
「『海賊危機一髪』?」
「いやほら、あるでしょ。樽にナイフを刺すおもちゃが」
『海賊危機一髪』について思い出そうとしたその時、メラの頭上にナイフが現われるが、歩き続ける彼女とすれ違うように、ナイフは地面に突き刺さる。
「まともに攻撃が当たるのは、止まった相手ぐらいだ。それこそ、消えた人間に驚き、何も分からず突っ立っている様なボンクラみたいなのがな」
「『海賊』以外は大体分かった、あとは……」
「もぐら叩きだよ」
メラが薬草を使い、元の俊敏な動きに復帰する。
「とにかく本体を追い回す! 爺さんはオレとは反対側にいてくれ!」
メラが剣を構え、男に向かって走りだす。ナイフを投げようとした男は慌てて消えた。
「なるほど、逃げるので精一杯なのじゃな」
私は大剣を構えて走りだした。
男は先程と打って変わって、明らかに焦っていた。攻撃の頻度が減り、瞬間移動ばかりが目立つようになる。
「瞬間移動か、確かに一撃必殺だし暗殺にはピッタリの魔法だが……」
メラが走りながら喋る。男は魔法の制約か、移動後にしばらく動けなくなる。次に瞬間移動できるときは、私かメラが目前まで迫る時だった。
「暗殺ってのはな、最初の一撃でし損じたら、後は逃げるしかねえんだよ」
男が消えようとする瞬間、メラの剣が男の肩を捕らえた。男はそのまま岩壁に縫い付けられる形になり、絶叫を上げる。
「痛みで魔法どころじゃないだろ。詰みだ」
「く……!」
男が震えた手でナイフに手をかける、メラはその腕を蹴って反撃を封じた。
「確かにこんな魔法、国王から見れば頭痛の種じゃな。いつ自分が狙われるかたまったもんじゃない」
「……頭痛の種? お前、本当に何も分かっていないんだな……」
私の言葉を聞いて、男はにやにやと笑いだした。
「何を笑っている、周りが見えてねえのか?」
メラの質問を無視して、男が突然足を振り上げる。メラがとっさに剣を手放し後ろに仰け反って避けると、靴から伸びていた刄が顔面の鉄仮面をかすめた。
「……っ、てめえ! まだやる気か!?」
うろたえ、激昂するメラの隙を突いて、男は身に付けていた首飾りを引きちぎると、天井に向かって高々と放り投げた。
「何じゃ!?」
首飾りが上空で消えると、男は高らかに笑いだした。
「何だ、今何しやがった! おい!」
メラが腰から短剣を引き抜き、男に詰め寄る。
「最後の……魔法だ」
男は臆する事なく、勝ち誇った様に言い放った。
「『巨剣のゴウト』に……聖騎士団一の荒くれ者メラか……侵入者を知らされたとき、私は勝負を諦めたよ」
負けを悟ったのか、男は淡々と語りだす。それを聞いて私とメラは驚いた。
「わしらが来る事が分かっていた? 国王はお前を追放したんじゃないのか?」
「まだ言うのか、表向きはそうなんだろう。私は密かに進めていた『
「馬鹿な、この国じゃ魔法はご法度だぞ。国王自らが禁忌を犯す……予想以上の悪人だな」
「禁忌を犯すから悪か? 違うな、古臭い規律にとらわれず、国王様は私の研究の価値を認めてくれた。故に国を追い出すどころか、このような研究施設まで与えてくださったのだ……」
男はそう言って、再び笑いだす。それらの様子を、メラは怪訝な顔で見ていた。
「じゃあその……竜の呪いについて何も知らないのか?」
「竜の呪い? そんなものは……」
私の問いに男は一瞬言葉を止め、再び口を開いた。
「待てよ、竜の呪い……聞いたことがある。確か、私の知り合いで……っ!」
喋りの途中で男は絶命した。見ればメラが肩に刺していた剣を抜き、胸に深々と剣を突き刺していた。まさに一瞬の出来事であった。
「何をするんじゃ! こいつはまだ……」
「こいつは何も知らねえ! それより急いで出るぞ!」
メラが出口の扉に向かって走りだす。私も慌てて後を追った。
「何も殺すことは……」
「こいつの話が本当なら、国王自らが危険な魔法を研究していたことになる。自分が使うならまだしも、それを扱う部下をいつまでも置いておくか? その気になればこいつは、国王の目の前に瞬間移動が出来たかもしれないんだぞ!」
「……まさか、口封じする気か!?」
「『最後の魔法』の後、こいつは急にベラベラと喋りだした。もしそれが時間稼ぎなら……」
そのとき、天井に不思議な円形の図が浮かび上がると、そこから黒い球体が大量に降ってきた。見ればどれも導火線のような物が付いている。改めて出口に目を向けてみるが、私たちは到底、扉に辿り着けそうにない。
「メラ! ゲームが上手いんじゃろ!? これもどうにかならんか!」
残された僅かな時間、すがる思いで私は話を振ってみる。
「……ダメだ。国王が一枚上手だった」
半ば予想していた答えを、メラがぼそりと呟いた。
そして、視界の全てが閃光に包まれた。
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