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DISC 1

1章 『戦士』 Stand Up

 人は皆、生まれついての戦士。人として生を受けた以上、人は戦いから逃れる事はできない。


 自身を向上させるため、行き先を阻む外敵を倒すため、大切な人を守るため。人は武器を手に、勇気を胸に立ち上がる。


 腕力の有無や技量の差、有利不利、社会的地位など気にしてられない。戦う時は今日か明日か、その時は誰にも分からないが、来た以上は老若男女、全員が立ち上がらなければならない。


 人は皆、生まれついての戦士。人として生を受けた以上、人は戦いから逃れる事はできない。


■■■■■□□□□□


 雨音が聞こえる。だが、不思議な事に体が濡れたり、ましてや冷えを感じない。何だか夢の中にいるような、そんな現実離れした空気を感じ取る。


「学……」


 目を開けると、そこは薄暗い森の中だった。上半身を起こすと、自分が鉄製と思しき鎧を着ていることに気付く。しかし重さは微塵も感じない。まるで肌着を着ている様に馴染んでいる。


 状況の把握もままならない中、背後から奇声が聞こえた。振り返ると長い棒のような物を持った、緑色で長身の人間……の様な怪物がいた。


「ひっ!」


 小さく悲鳴を洩らすと、丁度そいつと目が合った。そいつはおもむろに手に持った棒の素振りを始める。よく見ると棒は先端にかけて膨らんでいて、赤い染みのようなものが見える。まるで『鬼』が持つ金棒、いや、木製の様だから棍棒だろうか? 


(まさか血痕……誰かを殴りつけた……!?)


 全身が危険信号を鳴らす。例えるならばブレーキの間に合わない車、眼前に飛び込んできた野球のボール。人生で何度か経験があろう、あの「大怪我の予兆」とも言うべき悪寒。絶対的な身の危険が迫る。慌てて立ち上がろうとするが、手元に愛用の杖が見当たらない。このままでは身動きが取れない。


「ガアッ!」


 怪物が棍棒を振り上げる。素材は分からないがとにかく巨大で、血糊がこびりついた露骨なまでの『凶器』。あれが自分の頭に下ろされたら……想像もしたくなかった。


「おい! 貴様ワシに何の恨みがある! そんな危ないものを振り回すんじゃない!」


 どうにか声を振り絞ってみるが、残念ながら反応がない。怪物は棍棒を真上に構えたまま、じっくりと近寄ってくる。


(このまま死ぬわけには……!)


 必死に周囲を見渡すと、少し離れた場所に大剣が落ちていた。ゲームの中で大男が使っていたものと似ていて、自分の身長よりも遥かに大きく見えるが、果たして使えるのだろうか?


「ガアアアア!」


 怪物が着実に近づいてくる。このまま動けなければ死ぬ。もし一撃をかわせたとしても二撃目を防げなければ死ぬ。どのみちあの鬼から逃れられなければ死ぬ。考えている暇はない。


「う……う、動け!」


 気合いと共に、両足と腰に力を入れる。杖なしに立ち上がるのは何年ぶりだろう。まるでぜんまい式のおもちゃが動きだすように、私の体はぎこちなく、静かに立ち上がっていく。


(体が……動いた!?)


 何年も使ってないはずの節々の筋肉が駆動し、背筋を正し、直立不動の姿勢が完成する。痛みはない。ただ久々の動きに戸惑う自分がいる。


「ぬおっ!」


 再び気合いを発して、そのまま剣の下へ走りだす。泥水が跳ねて少し口の中に入るが、吐き出すまでもなくそのまま溶けていくのを感じる。


(そうだ、この感覚は現実じゃない。こんな体でこんなに動けるはずがないんだ!)


 夢の中にいる感覚と似ていた。一見不可能に思える行動も簡単に実現できてしまう都合の良い世界。体にようやく頭が追い付く。昔動けたときのように体を軽快に動かし、段々と足を速めていく。やがて私は走りながら大剣を拾うと、背後の奇声はすぐそこまで来ていた。もう振り返って剣を構える時間はない。


「ガアアアア!」

「うおおおお!」


 恐怖を瞳に押し込めて、私は無我夢中で大剣を両手で握り、そのまま振り返りざまに真横へとなぎ払った。


 突如、辺りが静寂に包まれた気がした。降り下ろされた鬼の棍棒と、なぎ払った私の大剣は、それぞれどのような軌跡を辿ったのだろうか。棍棒に当たった感触も、怪物に剣を当てた手応えも、私には感じられなかったのだ。


「……ふあ?」


 しばしの沈黙の後、恐る恐る目を開く。見れば怪物の棍棒は、私の体の真横に振り下ろされていた。遅れてくる恐怖心で、またも小さな悲鳴を洩らす。


(避けたのか?)


 答えを求めようと、真正面に目を戻す。すると胴体が真っ二つになり、血しぶきを上げながら横にゆっくりとずれていく怪物の上半身があった。あまりの光景に、両目が見開いたままになる。


 やがて止まった時が再び動きだした様に、怪物はその場に倒れ、徐々に小さくなる断末魔は雨音に消えていった。


「殺人」とでも呼ぶべきだろうか? 人の形をした生物を斬り殺す行為。しかしそこに現実感はない。荒唐無稽な状況が、まったく重さを感じさせない手ごたえが、私の罪悪感を薄めていた。


「……正当防衛じゃ。許せよ」


 剣を一先ず地面に置くと、私は怪物の亡骸に向かって手を合わせた。すると怪物は消滅し、聞きなれない軽快な音が聞こえたかと思うと、その場に金貨などが散乱した。


(敵を倒す……報酬を得る……)


 夢にしては意識がハッキリしているし、現実にしては荒唐無稽な世界だ。そして何より、この風景を私はほんの少し前に、テレビを通して見ている。ここはおそらく日本でも現代でも現実でも無い。


(見た事があるぞ。ゲームだ……ここはゲームの世界なんだ)


 どうやら私は、学が遊んでいたゲーム『ファンタスティック・ファンタジー』の世界へと迷い込んだらしい。自分でも何を言っているか分からないが、この荒唐無稽な出来事には、そうとしか考えられなかった。


■■■■■□□□□□


 私は手に持った大剣を、天に向かって突き上げてみた。自分の身長以上はあり、さらに斬るというよりは叩き潰すという表現がふさわしいであろう、剣とは思えない分厚い刀身。そんな巨大な剣なのにまるで発泡スチロールの様に軽い。そういう剣なのか、それとも自分が怪力なのだろうか。


 とはいえ、その巨体ゆえに持ち歩きは不便でもある。鞘も無く、刀身が剥き出しなのが怖い。


(何か縄の様な物があれば……)


 おそらくは自分の持ち物であろう、近くに落ちていた大きい布の袋を拾う。中を見ると都合よくナイフに薬草や丈夫そうな縄、油の入ったビンや乾燥した肉等が入っていた。早速私は縄を切り、大剣を横にして背中に括りつけた。


(さて)


 今後やるべきことは二つ。学の捜索と、あの老婆に会うこと。学も一緒この世界に来ているのか、老婆なら知っているかもしれない。何よりこの世界からの脱出方法を調べなければならない。


 途端に、自分の腰辺りから僅かな振動を感じた。見ればベルトにもポーチのような小さい袋が括り付けてあり、中にはあの水晶玉が青白く光っていた。


「じいちゃん! どこにいるの!?」


 水晶を通し、頭に学の声が響く。たまらず私は叫んだ。


「学! 爺ちゃんはここだ! 学!」


 水晶に向かって必死に叫ぶが、学には伝わらないようだ。それに姿も見えない。


(そういえば、あの老婆はこの水晶が導くと言っていたな)


 なら、学がどこにいるか知りたい。現実にいるのなら、何としても戻らなければならない。もしこの世界に来ているなら……。


(学!)


 思いに呼応してか、水晶玉が強く光る。そして水晶玉は、ある記号を映し出した。


【↑】


「……え?」


 水晶玉を持ったまま、右を向いてみる。


【←】


 肩の力が抜けるのを感じつつ、私は水晶玉を信じ、一歩を踏み出した。


■■■■■□□□□□


 水晶玉が示す方向を進む中、いくつか気付いたことがある。まだ右も左も分からないが、今は分かる事だけ再確認をしたい。


 この世界は一見、現実と変わらないほど精巧に出来ているが、やはりゲームである。視覚や聴覚はあっても、匂いや味覚等、いわゆる触感というのが存在しない。幸いにも空腹を感じることはないが、さっき試しに乾燥肉を口にしたら、味も触感もないままスッと消えていくのを感じた。また、これほど雨に打たれているが体が濡れることも一切ない。


 そして身体能力。現実では杖なしでは満足に歩けない私が、鉄の固まりのような鎧を着込み、自分の身長以上はある大剣を背負って歩いている。若干手応えというか硬さは分かるが、重量感がまるで無い。おそらくゲームの大男みたいに、冗談じみた怪力なのだろう。


 そして、最初に襲われた鬼のような怪物と何度か遭遇し、戦闘を重ねて幾分か攻撃を受けたのだが、傷は残っても痛みは感じなかった。だが……。


 自分の体を凝視する。するとハートマークと共に「190」という数字が浮かんできた。これはきっと生命力だ。さっき薬草や食料を使ったとき、数値が上がるのを確認した。これが0を示すとき、おそらく私は死ぬのだろう。


 学がやっていた今までのゲームを思い出す。キャラクターが死を迎えた時、何事もなかったように万全な状態で復活したり、仲間の力で蘇生される事はあるが、この世界はどうなのだろう。


 死ぬのはゲームキャラクターとしての自分か、それとも現実の自分か。その時、肉体はどうなるのだろう? 元の世界に戻されるのか、この世界に残されるのか。考えれば考えるほど、不安が押し寄せてくる。


(とにかく……帰るんだ。学と一緒に)


 学の顔を思い浮べると、ほんの少し元気を取り戻せた気がする。そして雨の中、私は水晶玉が示す矢印に向かって歩きだした。


■■■■■□□□□□


 やがて私は、それまでの狭い林道ではない、開けた場所に出た。


 一見広い平原で、奥へ進むと崖がある事が分かる。足下の泥に気を付けながら、そっと崖の下を見た。


(この高さから落ちたら、ゲームとはいえ……)


 いくら現実でないとはいえ絶景は身をすくませる。懸命に視線を向けると、眼下に広がる森と、その向こうに城と町が見えた。もしかしたら学はあそこにいるかもしれない。そうでなくても、まず人に会って話がしたい。


(とにかく、森を出なければ……)


 水晶玉に目を戻すと、矢印は消えていた。代わりに真っ赤に光り、不気味に唸っている。


【備えよ! 強大な敵が迫っている。戦士なら死力を尽くし、生き延びてみせよ!】


 頭に男女が分からない声が響き、直後に地面が大きく揺れる。恐る恐る振り返ると、そこには最初に戦った怪物……とは桁外れの、巨人が立っていた。


(そう言えば、国王の依頼で魔物退治……だったか)


 老婆の言葉を思い出す、多分こいつがその怪物の親玉だろう。さっき戦った相手とは比べ物にならない大きさだ。見ると巨人は退路をしっかり塞いでいる。改めて振り返れば後ろは崖で、さすがに飛び降りるわけにはいかない。


(他に逃げ道は!?)


 咄嗟に横の林に駆け込もうしたが、見えない壁があるかのように阻まれる。そこでようやく、この戦いからは逃れられない事を悟った。


(何が導く水晶玉だ。危険が感知できるなら、早めに知らせて避けるものだろう)


 仕方なく背中の大剣を構える。この世界はゲームだ。ルールは目の前の敵を倒し、自分の運命を切り開くこと。それが出来ない者は……。


「ガアアアア!」


 雄叫びと共に、巨人が棍棒を振り上げた。やるべき事は分かっている。私は出来るだけ大きな声で叫んだ。


「ゲームで死んでたまるか!」


 今まで何十年、苦節も困難も乗り越えて、私は現実を生きてきたのだ。


 それを、こんな血の通ってない場所で、誰にも看取られないまま、簡単に終える気など毛頭無かった。


「ぐおっ!」


 振り下ろされた棍棒に対し、大剣を横に構え、片手を刀身に添える形で防ぐ。直撃は避けられたが、さすがの衝撃に体が少し動けなくなる。


(さすがに大将となると……)


 ふと自分の生命値を見ると、僅かに減っていることに驚いた。


(防御しても体力が減るのか! なんという馬鹿力だ!)

「フン!」


 続けて怪物が棍棒を真横に振る。体勢が直らないまま、私は横っ腹に受けて吹っ飛ばされた。しばし体が浮いたかと思うと、木にぶつかることでようやく地面に足が着く。考えるのも嫌だが、車にはねられる衝撃はこれに似たものなのかもしれない。あまりの衝撃につい握っていた剣を手放してしまう。


(しまった、剣が……)


 痛みはないが、衝撃と激しい動きに体がふらつき、酔いそうになる。ゲームなのに、こういう部分だけ自分が老人であることを思い出させる。


 巨人がこちらに近寄ってくる。出口は開いたがさっきの林道といい、おそらく脱出は無理だろう。何とか反撃を試みなければ……。


(接近戦は不利だ。攻撃範囲も威力も向こうが上、押し負けてしまう)


 私はここで気付いた。道具袋を落としている、それも大剣よりも近い場所に。


 考えるよりも早く足が動いた。道具袋を速やかに回収する。怪物の攻撃範囲は広いが、動きは見た目通り遅い。力で負けるなら、行動力で補うしかない。


 袋を逆さまにし、道具を全部出して確認する。油の入ったビン、大縄、残り僅かな薬草の葉……それと火付け石がある。


(油と火……これしかない!)


 薬草で傷を癒しながら、私は作戦を閃きつつあった。


 私はビンと火付け石を懐に入れると、剣には目もくれず、縄を伸ばしながら巨人の元へ走りだす。


「ガアアアア!」


 巨人が棍棒を振り上げる。振り下ろすまでは時間がある、それまでに間に合えば……。


 ゲームを思い出す。あの大男は物怖じせず、たった一人で怪物の集団に立ち向かっていった。私がもし、あの大男ならば……。


(いや、私は老人じゃない。あの戦士なんだ! やれるんだ!)


 棍棒が地面に叩きつけられると同時に、私は巨人の足元へ辿り着く。次は棍棒を振り上げるまで、それまでに行動を終えねばならない。さながら命懸けの「だるまさんがころんだ」である。


 急いで縄を巨人の片足に巻き付け、強く結ぶ。そして巨人の背中に飛び乗ると、残った縄も出来るだけ身体中に巻き付ける。


 巨人が慌てて振りほどこうとするが、怪力なら負けてはいない。私は飛び降りて巨人の足の縄を力いっぱいに引っ張る。巨体はバランスを失い、いとも簡単に転んだ。


(うまくいってくれ!)


 懐からビンを取出し、蓋を開けると、巨人の体に油をかける。見た目以上に量があったので、半分ほど浴びせかけると、あとは伸ばしてきた縄に垂らしながら急いで戻る。


 次に大剣を回収し、巨人を結んでいた縄を切る。そして油の染みた部分に、火付け石を何度も打ち付ける。


(映画だと確かこう……)


 祈るような気持ちで数回打ち付けて、やっと火花が出た。すると油に着火し、縄を伝って巨人目がけて火が走っていった。


「グアアアア!」


 巨人は瞬く間に火だるまになり、棍棒を落とし、暴れ叫ぶ。


 雨が降っているとはいえ、縄に染み込ませた油は、巨人に絡み付いて激しく燃え上がる。叫び声が小さくなり、どんどん弱っていく様子を私は見届けた。


(国王の依頼の魔物退治……おそらくはこの怪物なのだろうが、一体こいつが何をしたのだろうか)


 余った縄を回収し、半ば罪悪感から逃がれるように、私はその場を離れようとした。その時だった。


【戦闘継続中! 逃走は許されてはいない!】


 突如、水晶玉が語りかけてくる。


(継続中?)


 その瞬間、私は強い衝撃を受け、遥か後方に飛ばされた。


「ガアアア……」


 見れば全身が焼け焦げた巨人が、棍棒を振り切ったまま、こちらを見据えていた。虫の息だがあの炎を耐えたのだ。予想以上の体力だった。


 何度か地面を跳ね飛び、崖に放り出され、ようやく私の体は落下を始める。もう手立てはない、あとは地面に叩きつけられるだけ、何てあっけない最後だろう。


(力も知恵も足りなかったか……ゲーム、やっぱり下手なんだな)


 こんな事なら、学と遊んだゲームをもっと真剣にやるべきだった。まさか死の間際の後悔が、テレビゲームになろうとは。


「じいちゃん!」


 学の声が聞こえる。幻聴だろうか。もうじき死ぬというのに、その声は私を安心させてくれる。


(学……爺ちゃんはもうダメだ。もしこの世界に来ているのなら、何としてでも生きて帰ってくれ)


 そして幻覚だろうか、宙に投げられた私の体を、巨大な竜が優しく受けとめた。何と巨大で、雄大な姿だろう。岩の様な皮膚に抱かれながら、私は優越感に浸った。


「じいちゃん、まだだよ!」


 思わず目を丸くした。その竜は、学の声でハッキリと喋ったのだ。


「学……学なのか!?」

「じいちゃん、次で決めるよ!」


 学が巨人に向かって飛ぶ。巨人が気付き、よろめきながら棍棒を構え直す。


「学……ワシは……」

「しっかりしてよ! 負けたら終わりだよ!」


 姿や形が変わっても心は変わらない。学の一言はいつだって私に勇気をくれる。手から抜け落ちそうな大剣を、今一度力強く握り直す。


「今だよ!」

「よっしゃあ!」


 私は両目を見開き、巨人に狙いを定める。飛び降りざまに大剣を振り下ろした。巨人の払った棍棒よりも先に、私の剣が巨人を縦に斬り裂いた。


「アアア……」


 巨人の体が静かに消え始める。水晶玉を見ると光も治まり、完全に沈黙している。今度こそ倒したのだ。


「じいちゃん大丈夫? 遅くなってごめん!」


 竜にしか見えないが、学がはばたき、ゆっくりと降りてくる。


「ああ、学のおかげで助かったよ」

「よかった……」


 改めて学を見る。ゲームで大男が乗っていた竜と同じである。


「あのね、気付いたらじいちゃんとはぐれてて、体もこうなってて、慣れるのに時間かかっちゃって……」


 竜が後ろ足2本で立ち、前足2本の両指をつんつん当てながら、しどろもどろに話す。その慌ただしい言動がだんだんと学に見えてくる。


「しかし、よくワシの居場所が分かったな」

「聞こえたんだ。誰かの声で『仲間が苦戦している』って、水晶玉が光ってさ」

「ワシと同じじゃな。まあいいさ」


 分からないことだらけだが、まずは学に会えた。次は学の体を戻し、元の世界に帰る方法を探そう。ここがゲームの世界なら、一つずつ解決すれば終わるはずだ。


「これからどうするの?」

「まずはあのお城に行こう。魔物退治の褒美をもらわんとな」


 見上げれば雨は止み、空には虹がかかっていた。私は学の背に乗ると、青空に向かって飛翔する。こんな非常事態なのに、どこか心が胸躍るのを感じる。


(そうだ、あのゲームの開幕。ちょうどこんな風に……)


 まったく予想外の形となったが、こうして私たちのゲームも始まったのだ。

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