魔女に獣人、魔道具屋さんに妖精。現実とは異なる暦を持つ世界でファンタジー感覚溢れる要素に囲まれて綴られる、現実を生きる読者に強く突き付けるものを持つ物語。自分はこの作品をそのように感じています。
印象的だったのは、主人公であるテレーゼさんとその友人であるカミルさんの似ているようで違う立ち位置をはっきりさせるくだりです。テレーゼさんは魔力を求めていて、確かにそれは不足しているけれども料理や他の家事などは人並み以上にこなせる器用さと要領のよさを持っていました。それがあれば生きていけそうという程度の「才能」を持っていました。けれどカミルさんは自分の店を持つという強い夢のためにはどうしても足りないものがあって、それを求める以外に道がありませんでした。
他に選択肢があるということがもたらす甘えは決して悪いものではないでしょうが、そのことが彼女達にとっては決定的な違いになってしまったのだと感じます。
だからこそ、最後にテレーゼさんが決めた覚悟の行く先がとても気になります。大切な友人を救うためにこれからどのような物語が始まるのか、とても楽しみにしております!