1-4ライカの過去

俺はライカと呼ばれた女についていく、そして…とある部屋の前に止まった。


扉には《101号室》とかかれた札がかけてあった。


「ここが、今日から私とシュナ君の愛の巣となる部屋よ。さぁ、入ろ」


俺は背中を押された。


部屋のなかは至ってシンプル、ベッドと机しかなかった。


「さて、伝えなければならないことがあるの。シュナ君は寿命が1ヶ月しかありません。理由は簡単よ。環境が違いすぎるのよ。シュナ君は今まで、障気が充満していた地で育ったから、この地の太陽の光、空気、食べ物、水全てが異物だからアレルギー反応を起こすの。今はまだ時間がたってないから大丈夫だけど…」


「つまり俺は何をすればいい」


「この部屋で私が魔法を使って様々な環境を作り出すの。そして少しずつ耐性をつけさせるわ。では始めましょう」


ライカは腕を振るった瞬間、俺は体に異常を感じた。鼻下がヌルッとした感触が広がり、触ると血がベットリとついていた。


それだけではなく…目から、耳から、ヌルッとした感触が…


「ゴフッ」


どうやら口からもだ。


俺は意識を手放した。


目を覚ます。


「お疲れ様♪」


「俺は何日寝てたんだ」


「うーん、寝てたのは間違いかな?だって私回復をずっとかけてたから、失神と覚醒をひたすら繰り返してたから、正確な答えは一瞬、そして、君の言う通りにすると2週間かな?」


俺は体を動かそうとして、失敗する。


「まだだよ?無理しないで。破壊と再生を繰り返したから体が疲れてるのよ。そして、次はご飯ね♪これを食べて」


俺はその後あらゆるものを食わされた。体を壊したらすぐ回復させられ、また食べて壊し、また回復、ひたすら繰り返し、耐性をつけた。


俺は初めはこんな感じで痛みを覚えた。


「さて、次はどうしようかな?普通なら、ここで、動物などで殺しを覚えてもらうんだけど…いる?」


食人カニバを普段やる俺に必要か?」


「だよね~。あとは…魔法耐性を身に付けるのが一番だけど…ずっと障気に当たってるのなら大丈夫よね…うーん、ここに来て、2週間と3日…早いけど、最終段階いっちゃう?」


突如、投げつけられ壁に叩きつけられ、触手のようなもので壁に固定される。


「テメェ、何しやがる!クソッタレ、ぶっ殺してやる!!放せ糞野郎!!」


「フフフ、落ち着いて、今からシュナ君の心を壊してあげるわ。私の仕事を受け継いでもらわないといけないからね。そして、これは少しの復讐かな?ジョゼフィンに対する。彼女どんな顔をするのかしら?大丈夫よ。痛いのは最初だけ、苦しいのは最初だけ、そのあとは何もかも感じなくなるから」


彼女は肉体をドロドロとしたスライム状に変形させ、俺を包み込む。


彼女の体はとても温かく、優しかった。


俺は意識を手放した。




目を開けると…そこはのどかな田舎町が広がっていた。一人の女の子が大きなバケツを運んでいた。


「あれば昔の私よ。ここは私の思い出かな…そして、ここは…かつてはなんで呼ばれてたのかは私にも思い出せないほど昔の…現在マレクスと呼ばれる地」


突如、女の子に対し、石が投げられる。それをきっかけに多くの石が投げられ、女の子にあたる。


「この化物め!出ていけ!この地から出ていけ!」


多くの子供たちが笑いながら石を投げていた。


「私はね…堕天と呼ばれる父と人間の母の間に生まれたハーフなの。聖者がこの地訪れる前、この地には連邦の民が多く訪れていた。だけどね…ハーフは差別されていたのどちらにもね」


小さいライカは駆け足で去っていく


そして、この村の村長の家にたどり着くと…


「おい、小娘!遅いじゃないか!水は持ってきたのかい?…なんだ!これは水が減ってるじゃないか!お前、飲んだのかい?いやらしい娘だね!お前には罰が必要だね!」


女は腰から鞭を取りだし、ライカを打つ


「ごめんなさいごめんなさい…ごめんなさい、ご、ごめんなさい…」


本当は石から逃げてるときに走ったせいであるが、言えない。父がおらず、病弱な母の面倒を見れるのは私だけ…耐えなければ


鞭打ちが終わると、頭から糞尿が混じった汚水がかけられる


「ハハハ、あら、失礼?ちょうどそこにかけて欲しそうな顔をした女がいたものだから」


二回からぶちまけたのは、この村の村長の娘だ。綺麗な服を着て、化粧をしている。ボロ着を着る私とは大違い。


私は湖に飛び込み、体の汚れを落とす。



トボトボと自分の家に帰り、途中で野生化した果物をもぎ取り、物置小屋に入る。



「ただいまお母さん。果物を持ってきたよ」


藁の上で寝てた女が上体を起こす。

「お帰り、ライカ…ごめんね。その果物はいいわ。あなたが食べなさい」


ライカは首を振る

「うんうん、私道中で食べてきちゃった。もうお腹いっぱいなの」


嘘だ…途中で野草の根と木の皮を食べてきた。このあと、村長から渡されるゴミのような残飯の余り物もお母さんに食べさせよう。


「ありがとう…いつもライカに迷惑ばかりかけてごめんね…ゴホッゴホッ…私の体がもう少し元気だったら…」


「無理しないでお母さん…早く元気になろ?ほら、食べて!」


私はこのとき幸せだった。貧しく、飢えていたけど…愛があった。



それが変わったのは彼らが来たときだ。マレクス…宗教者…聖者…


まず彼らは連邦の手先を滅ぼすと言ってきた。しかし、実際連邦の民は彼らが来る前に故郷に戻っていた。それでも彼らは諦めなかった。少しでも関わりを持つものを糾弾しようとした。


勿論私達の家族も例外ではなかった。


突如、男たちが部屋に押し入り、私と母を捕らえ、母を縛り上げ、母は私の目の前で火炙りにさせられた。私は絶叫をあげ、抵抗しようとするが、手足を封じられ、母の姿を目に焼き付けるしかなかった。


「次はお前だ!」


男たちが私を引きずる。


その時私は…恐らく憎しみで一杯だったのだろうか…何かがキレた音がした。目の前が真っ赤になった。男たちが悲鳴をあげる…関係ない…私は、何も残ってない…いや、私には何もなかったのだ。



目が覚めると、周囲は血の海になっていた…先程まで人だった物がバラバラになり、臓物をぶちまけていた。


そして、私はただ見ていた…違った。それらを拾って食べていたのだ。私は人を食べてたのだ。村長を、その娘を…


ハハハ…私には何も残されてないといったが、それは嘘だ…私にはやっぱり愛があった。貧しかったけど母からたくさんの愛を貰っていたのだ。そんな私には憎しみを感じる心理的な余裕はなかった。大きな喪失感はあったが、母の愛はじわじわと溢れてくる。そして私はまた絶望する。



俺はそんな景色をただ見続ける。楽しくもない景色を、ムカつくことにライカの感情も流れてきやがる。


血に濡れたライカはそのまま全ての肉を食いきった。感情を共有した俺にはわかる。彼女が本当に喰いたかったのは彼女に愛を与えた母親だ。だが、その母親は丸焦げのは炭となっている。その時の彼女は何もわからなかった。とにかく人を食べ続けた。決して手に入らない愛を求めて…


「私はその時は羨ましかったのだと思う。人並みの幸せを手に入れたい。綺麗な服を着て、普通の食事を食べて、友達を作って、友達とおしゃべりしたり、話したり、そして夜はベッドで寝る。彼らを食べた理由はたぶん、食べたらその生活が手にはいるのではないかと考えたんじゃないかしら?」


「いや、お前は違うよ。お前は愛情に餓えてただけだ。奴等の愛情を奪おうと食っただけだ。食っても食っても満たされぬのにな」


現在のライカは黙る




そして、時が過ぎ、私は大勢の人間を殺し、食べ、多くの町を滅ぼしてきた。教会は軍を派遣し、私を討伐しようとしたがことごとく失敗する。いつしか私は《人喰らい》と呼ばれる災厄となった。そんなわたしも命運が尽きた。



光の奔流に飲まれる。手足がもがれる。意識が奪われる。教会は最終兵器使徒を使ったのだ。12人しかいない教会最高戦力を投入したのだ。





私は教会の真下の牢獄に封印された。しかし奴等は封印を部分的に解除して、私の体の一部を使い、生体実験を行った。初めて味わう苦痛に私は母親を無くしたあの日から二度目の喪失を味わった。また心が壊れたのだ。



永遠と思えるような長いときを経て、私は初めて光を得た…


「大丈夫か…今解放してやる。待ってろ」


白い長髪を持つ男が封印を解除する



私は何もわからず暴れる。


「落ち着け…落ち着け…もう大丈夫だ」


封印が完全に解除した瞬間、私は体をヘドロ状に変貌させ、彼を補食しよう試みるが…



「よーし、いい子だ」


急に意識が途絶える



目を開けると、目の前には先程の男が覗きこんでいた。


「大丈夫か?まぁ、その…少しやり過ぎたかな…」


私は首をかしげる


「いや、お前の体内に魔力を流し込んだのだが、お前の耐性はなかなかのもんだから、少し強めにやったんだよ。まぁ、平気なら気にしないでくれ。お嬢さん名前は?俺はマオだ」


「私は…ライカ…」


「うん、いい名だ」


これが私と、後に東方の賢人と呼ばれるマオとの邂逅だった。

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O brave new age~ああ、素晴らしき新時代 sh1126 @sh1126

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