7-2 覚醒

 津軽に再び日が昇る。それはいつしか高々と輝き、やがて西の彼方へ消え失せる。人に生あれば、死があるのと同じ。


 誰問わず一睡していない。大浦城では朝早く、再び軍議が開かれた。


 焦点は、石川城を攻めるか否か。


 大浦を騙り、郡代を殺した。その罪は重い。ただしあちらには主筋の鼎丸と保丸がいる。攻めるのも、義に伴わず忠ではない。


 為信に、家来一同は決断を迫った。



 ”いますぐ石川城を囲むことを命じる”



 大浦軍千五百は、その日の内に石川城を取り囲んだ。大浦が大浦の軍勢を囲む事態に、“救民”の兵士らは困惑した。元々は大浦家が兵を集めていたからこそ参加したのに、この事態はどういうわけかと。動揺が広がった。


 科尻と鵠沼は、逃げ出そうかと相談する始末。ただ……もうここまで来てしまった。山の向こうの九戸らが信直を倒せば、こちらに援軍が来る。それまでの辛抱だ。なによりも鼎丸と保丸はここにいる。


 ……城の外。大浦の本陣より少し離れたところ。小高い丘の、大きな木の元。なんの木だろうか……名はわからない。枝には、黄色く小さな花がついている。


 為信は乳井と立って話をする。


「約束する。岩木山の復興は、大浦の力において成し遂げる。」


乳井は応じた。


「わかりました。仲間らと通じて、二子を外へ連れ出します。」


 ここで、為信はため息をつく。木の根元に背をかけ、ぼんやりとしだした。


 乳井は、いますぐに立ち去って良いものかどうか戸惑う。毒気もまだ抜けきっていないのか。



……実は大きな見当違い。


 頭の中は極めて冴えわたる。しかも為信の心うちは、以前と以後で明らかに異なる。甘さは既に消え失せた。

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