3-2 図面

 ひらりと一枚の紙が、為信の元へ飛んでいった。自然と目がいく。


 ……そこには、筒状の何物かが描かれていた。


 「これはなんだ。」


 為信は問う。眉間に皺をよせて、いまだ理解していな様子であった。

 科尻は渋々ながら答える。


 「……火縄でございます。」


 火縄とな。聞いたことはある。なんでも中央では戦に取り入れられていると聞く。


 そのとき、後ろから鵠沼がやってきた。

 科尻は “こちらは殿よ” と耳打ちをし、科尻と同じくかしこまった。為信はあばら屋の中へ通され、談義が始まる。


 為信は言う。


 「なかなかの……火縄は高価な物にて、こんな田舎には手に入らぬ。しかしここにその図面がある。何をしようとしていた。」


 科尻と鵠沼は顔を見合わせる。いくらか青くなっているような。


 「いえ……後学の為でございます。将来、殿のお役に立てるよう、知識だけでもと入れていたのです。」


 それはあっぱれなこと。


 ……為信は、まじまじと図面を見る。


 “……いまいちわからんな。実際に手に取ってみたいのお。”


 ここで鵠沼は恐る恐る為信に訊ねる。


 「為信様……なんのご用件で参られました。」


 「うむ。小笠原殿に、面松斎殿と会えるように席を設けてほしいと願うつもりであった。」


 科尻は答える。


 「確か……面松斎は鯵ヶ沢に移ったはず。」


 彼の占いが評判となり、大家主から店を出させてもらったという。

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