第2話 転生
溶けた壁の向こう側はまるで死という名の絵画のようだった。そこは満開の白い花が咲き誇っていた。そして霧がかなり濃くかかっている。気候的にはこの世とほぼ変わらないと思うが、生物の本能的に、ここがあの世だとなんとなく察した。そしてすでに聴覚と嗅覚がほぼなくなっていた。自称鬼に導かれるままに先へ進むと、橋があった。特に特徴もない。ただの吊り橋だった。なにも問題もなく俺はその橋を渡った。
渡りきってからしばらく歩くと、中華街のような街へ着いた。街では霧はかなり薄くなっていた。
そして自称鬼は二つのでかい門の前で止まった。そしてそのでかい門の真ん中に、鬼のような人が座っていた。しかし年齢は見た目的に、俺と同じくらいかと思われる。
「閻魔王子様、例の人を連れてまいりました」
…はい?閻魔"王子"?
というか例の人とは何なのだ。俺は特別なのだろうか。
「うむ。そなた、大藤 真興というのだな」
「はいそうですが」
「よく聞いてくれ、お前は死ぬことができない」
「…は?」
この状況で死ねないだなんてよく言えるな。この閻魔"王子"様よ。閻魔"大王"連れてきて俺を天国にでも地獄にでも連れていってくれよ。
「君は、お父様、そう閻魔大王様が選んだ特別な死人なんだ。そしてその死人は地獄や天国に行くことができない」
「おいおい今更なにをいってるんだ。俺の死因は自殺だ。死にたくて死んだんだぞ。またあんな人間どもとまた生きなければいけないのかよ!!そのお父様って閻魔大王なんだろ?だったら俺をそのお父様のところへ連れてけよ!死なせろ!」
「うーん」
閻魔王子はため息をついたあと、かなりでかい本を持ってきた。
「あのな、もうあの世は死人でいっぱいなの。これみてみ」
「…」
閻魔王子はでかい本の最後のころのページを俺に見せた。本には死人の名前と死因、そしてその人が地獄と天国どちらに行ったかが書かれていた。もちろん俺の名前はなかった。
「この死人の書にね、このままのペースで人が死んでしまったら、すぐに名前が書ききれなくなってしまうんだよ。新しく死人の書を作るには、人間界でいう5年くらいはかるくかかるのね、だからさ、大藤真興、君には死人減らしというものをしてもらう」
「…その死人減らしって…俺はどうなるんだよ」
「まず君にはもう一度この世へ戻ってもらう。そして人間の命を100人救う。100人の命を助ければ、お前は自動的にここにくる。そしてお前の願いを一つだけ叶えてあげる。そゆこと」
「その願いを叶えるって、なんでもいいのか?」
「ああ。ボクかお父様ができる範囲であれば。これはお父様がボクに頼んだことだからな」
「そういえば、なぜ閻魔大王には会えないんだ?ここには本来閻魔大王がいるはずだろ?」
「お父様はもう高齢だから、神様同士の会議とかで忙しくなってきてしまったのさ。だから後継として最近はボクに新しい死人の天国と地獄選別の仕事をしてるんだ。そしてお父様はいま、地獄と天国に直接行って、君みたいに死人減らしできそうな死人を探してる。もしも死人の書に名前が書けなくなった、つまりあの世が死人で溢れてしまったら…なにもかも崩壊してしまう。この世もあの世も。だからお願いだ。大藤真興」
「…なるほど。のった」
俺は"願いを叶える"という言葉につられて、その死人減らしというものをすることになってしまった。それにこれが終わればすぐに死ねるし、それに天国へ行きたいと願えば確実に天国へ行ける。これは実はラッキーなのかもしれない。
そして俺はまた、死人減らしという第二の人生を過ごすことになったのだった。
ダイ。 伊森ふう @huyumo_416
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