第39話 女 弁護士さん。
「もしもーし、もしもーし」
「もしもし。美貴さん」
「あー、やっと通じた。
お久しぶりです。お元気ですか?」
「本当に美貴さんなのね。
驚いたー!
今どこにいるの?」
「えー。そちらで言うと、追放先です」
「生きていたのね、よかったー。
ご家族の方はみなさんお元気なの」
「それが、流行り病で母さんを亡くしました。
でも、智と道夫は元気です」
「お母様が。
お気の毒に。美貴さん元気出して」
「はい、ありがとうございます。
一時期は落ち込んでたいましたが、今は世界を変える為に頑張っています」
「世界を変えるって。
そういえば、流行り病とか言っていたわよね。そちらは人が住んでいるの」
「はい、大勢の方が。
それで弁護士さんにご相談があるのです」
「何か、重要な話みたいね。
じっくりと聞くわ。今は時間もあるし」
「ありがとうございます」
私はそれから順序だてて、システムと追放の地が造られた経過を説明した。
もうすぐ第二のコードが解放される事も。
「凄いことになっているわね。
それは、ここの歴史始まって以来の出来事になるわ。
それで、気になるのはその、第二のコードは何が解放されるの」
「はい、それは法律に関する箇所と、防衛に関する箇所の二箇所です。
具体的に言えば、法廷のアンドロイドは機能停止になり、法の守護者がいなくなります。
代わりに、人間の裁判官が必要になると思います。
防衛に関しては、システムを守っているアンドロイドと警察官のアンドロイド、それと軍隊のアンドロイド達が機能停止になります」
「法律に関しては、私の専門だからなんとかするとしても、警備のアンドロイドがいなくなると、混乱が予想されるわね」
「そちらの方は、智の友達の方が警察関係者なので、そちらにお願いをするそうです。
後で、彼の連絡先を教えますので、連絡をしてください。
とても正義感に溢れた方で、私達の家にパトカーが来るのを事前に教えてくれたんです」
「その彼と、連絡を密にしてこれからの事に対処しないといけないわね。異性のアンドロイドの権利と、人工子宮で育っている胎児はどうなるの?」
すぐに核心の部分を突いてきた。
さすがだと思った。
この人ならば必ずや成功してくれると確信した。
「異性のアンドロイドに関しては、それが一番の問題になると思います。
男女の区画が無くなると、当然の行動として人間の異性を相手に選ぶ人達が必ずでてきます。
アンドロイドの権利を守りながら、離婚の手続きが必要なのではと思います。
人工子宮の胎児に関しては、流行り病で子供を亡くされ、養子でも子供を欲しいと思う多くの夫婦がこちらにいますので問題ないと思います」
「よく考えられているわね。
それで、そちらの法体系はどうなっているの。人の移動が出来るようになると思うんだけど、そちらの事をもっと詳しく知らないと、ある程度こちらも合わせる必要性があると思うんだけれど」
「法律は無いに等しいですね。
問題があると会議を開き、そこで問題の答えを決めます。
それぞれの集団が違う仕事をしており、配給制が基本で成り立っている共同体ですね。
もし、欲しい物があれば予約をして、順番が来ればもらえます。
皆さん素朴な方々ばかりで、人を出し抜こうとする人は、殆どいないです」
「それは素晴らしい世界ね。
私もそちらに移住したいわ。毎日、法律に振り回されて、時にはうんざりする事があるから。
ま、それは将来の楽しみ取っておくとして、そちらの世界で問題点があるとしたら何」
「最大の問題は近代的な医療が全くない事です。
漢方で全て対処しています。
流行り病があり、それで母を亡くしました。
近代的な医療があれば助かったと思うんです。
こちらの方が特に切望しているのが近代的な医療なのです」
「それでは、医療アンドロイドの派遣が必要になるわね」
「はい、その通りです。
それに伴う法的な何かが必要と思うんです」
「よくわかったわ。
それと、そちらはもしかして、近代的な社会インフラが無いのでは」
「そうなんですよ。
おかげで私は、逞しくなりましたけど」
向こうで、少し笑っている。もっと具体的に話した方がいいかな。
「全くないですね。
電気、ガス、水道がありません。
従って、照明はローソクや行灯、水は井戸水から滑車を使って汲み上げます。
ガスの代わりはカマドで薪を使って煮炊きをしています。
簡単に言えば、毎日が電気のないキャンプファイアみたいなものです。生活の為の社会インフラが全て人力と言う事で、1日の多くの時間がそれに使われています。
運搬などは陸は馬、海上は小さな船しかありません」
「それは大変ね。
そうすると、こちらに移住して来る人達の法的な整備も必要ね」
「はい、こちらの殆どの方は住み慣れた故郷を離れたくないそうですが、若い人達を中心に移住を考えている人達も大勢います。
逆にそちらから、こちらに来たいと思われ方もいらっしゃると思うのです。こちらでは美味しい生の魚を食べますから」
一瞬、会話が途切れた。
あ、余計な事を言ってしまった。
「あ、ごめんなさい。
頭の中で、生の魚をぶつ切りにして食べている美貴さんを想像して」
「えー、ひどーい。
いくらなんでもぶつ切りはないですよ」
二人とも笑ってしまった。
実際に食べないと、これだけは分からないだろう。
私は、目の前にあっても躊躇していたんだから。
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