第10話 女。 夫婦の調和
夢のような結婚式が終わったその後で、彼は今後の予定を話してくれた。
仕事は10日後なので、その間はゆっくりできると。
これから行く所は総合リゾートで、カジノを始め、室内プール、テニス、ゴルフなどのスポーツはもちろん、海水浴、映画館、ショッピングモール、遊園地があると知らされた。
結婚式の後は、また夢のような時間が始まるんだろうか?
今の自分があまりにも幸せなので、信じられなかった。
ふと、自分の服が気になりだした。
ハネムーンなのに、この地味な服しか持ってない。どうしよう。
彼に話さないと、彼が恥をかいてしまう。それに、この服を着ていると廃棄したアンドロイドの顔を思い出してしまう。
彼女には悪いけど、2度と着たくない。
服のことを彼に話した。彼は理解してくれて、一緒に買い物しようよ、と言ってくれた。
ここでも彼の優しさが伝わってきた。
「やっと着いたな。疲れたかい?」
「少しだけ。でも、まだまだ動けます」
「よし、それじゃ、美貴の服を買いに行こうか」
「よろしくお願いします」
「いや、さっきも言ったように、他人行儀な話し方は無しだ。でも、急には無理か」
「努力しているのですが、つい、口から出てくるのです」
私が言い終わらない内に、彼が私を抱き寄せ、優しくキスをしてくれた。
このままずっと、抱いて欲しいと思った。
もしかしたら私、彼を好きになったのかもしれない。
彼からほんのりと、清々しいしいコロンの香りがした。
「この口から出る言葉なら、どんな言葉でも歓迎さ」
「私、こんなに幸せでいいのでしょうか?」
「もちろんだよ。キザな言葉かもしれないけど、2人一緒に、もっと、もっと幸せになろうよ」
「はい」
まだ、1日も経っていないのに、彼を好きだとはっきりと分かった。
そして、彼も私のことを好きみたい。
「おっと、こうしている時間はない。姫君、参りましょうか」
「はい、王子さま」
彼は私のことを、お姫と呼んでくれた。
冗談でも、とっても嬉しかった。私が彼のことを王子さまと呼んだら、彼も喜んでくれている。この人とならうまくやっていけそうな気がしてきた。
ショッピンモールに着いて、最初に私の普段着を選ぶ事にしてくれた。
「来た時は、気がつかなかったけど、人がほとんどいないな」
彼は確かに、人がほとんどいないと言っていた。
私はその理由を知っている。プログラマーの母さんが、その疑問を知りたくて政府の中央コンピュータにハッキングしたのだ。それによると、昔、人口制御のパラメーターが何者かによって書き替えられ、その為に人口が徐々に減っていったんだそうだ。
もうやめよう、こんなこと考えるのは。今日は私達が結婚した日。記念すべき日。彼の気持ちも変えなくては。
「どうかしましたか」
「いや、なんでもないよ。それより、こっちの方が似合ってないか」
「それでは、これを試着してみますね」
その服は青色のワンピース。
そうなんだ、こんな感じの服が彼の好みなんだ。
これからは、彼に気に入ってもらうように努力しないといけないわ。夫婦生活はお互いの努力が必要って母さんがいってたもの。
私の好みの服と、彼の好みの服を上手く混ぜる。
いいえ、違うわ、混ぜるではなくて、よりいいものに調和させるかな。そうよ、それだわ。
私の好みの服に、彼が好きな所を足して、調和させる。
決まったわ。この服はまさにその服ね。
「それ、決まりだな。似合っているよ」
「そうですね。昔、選。そのー、これ好きです」
「よし、それも買おう」
「こんなに服を買ってもらって、いいのですか?」
「もちろんだよ。ポイントは沢山あるんだ。後で詳しく教えるよ」
「はい。ありがとう、智」
「おーおー、それそれ。初めて名前だけで呼んでくれた。嬉しいよ」
「はい。頑張ります」
「いや、頑張らなくても。一緒に生活すると、たぶん自然に出てくるよ。じゃ、これで今日の買い物は終わりにしよう」
「はい」
彼が私の手を取り一緒に歩いた。とっても幸せ。外はすでに夜になっていた。そういえば、お腹がすいたなー。お昼はあまり食べれなかったし。
「お腹すいたな。これからご飯にしないか?」
「私も、そのー、お腹がすいています」
「よし、さっき買ったディナー用のドレスを着て、レストランで食事だ」
「え、本当ですか。すごく楽しみです」
本当に楽しみ。あのドレスを早速着れるなんて。
それに、お腹がとってもすいている。
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