第22話 Diopside

 男は別に何かしてくるわけでもなく…受け身で水晶みあに身を任せていた。

 気になったのは、タケルと同じような場所に絆創膏を貼っていること。


 2度の射精を迎え、少しすると形態のアラームが鳴る。

「後20分ですけど…シャワー浴びますか?」

「ん…そうだね、そうしようか」

 立ち上がり一人でシャワールームへ向かう。

 少し遅れて水晶みあがシャワールームへ向かう、男は湯船に浸かっていた。

 水晶みあがシャワーで身体を流していると、男が湯船から出て黙ってシャワールームから出ていく。

 後姿を目で追う水晶みあ、背中の絆創膏が剥がれていた…そこには、『PTD No1´』の刻印。

( PTD…Purpleパープル Tearティア Dropドロップ )

 水晶みあが部屋に戻ると、裸のまま男はベッドで、うつ伏せになっていた。

 派手なパンティに長い脚を通しながら、PTDの刻印をチラチラと見てしまう。

「気になるのかい?」

 男が水晶みあの視線に気づいて声を掛けた来た。

「なにが…ですか…」

「ん~とぼけなくていいよ」

「だから、なにがですか!」

 少し声を荒げる水晶みあ

「ククククッ…紫の涙のことだよ…」

「………帰ります……」

 手早く身支度を整えて、店に電話を入れようとする水晶みあをグイッと引き寄せてキスをする男。

「ん…やめてください!」

 男の腕の中から逃れようとする水晶みあ

 意識が朦朧もうろうとする…目を開けていられない…身体に力が入らない…。

 ククククククククッ………遠のく意識のなかで男の耳障りな含み笑いが不愉快だった。

(タケル…たすけて…)


 時間が過ぎても連絡が来ない。

 外で待っているタケル、嫌な胸騒ぎがする。

 水晶みあは時間より早く戻ることはあっても、連絡も無しに時間を超えることは無い。

 タケルは水晶みあの携帯に電話する。

「遅いよ~サード」

 男の声がする。

「…サード…誰だお前!水晶みあを出せ」

水晶みあちゃんは、お昼寝中だよ~、サード、施設で待ってるよ、追ってきなよ」

「貴様…誰だ?」

「ん~…追ってきなよ…会えば解るさ、サード」

 そこで通話が切れた。


「クソがー!」

 タケルが車を急発進させる。

 目的地は知っている…あの施設だ…。

(俺のことをサードと呼ぶのは、施設の者だけ…)


 自分が逃げてきた、その道のりを逆に辿る。

 そう…たけると逃げた記憶が否応なしに蘇る。

 嫌な記憶…ツライ記憶…でも憧れたフェンスの向こう側…高揚感もあった。

(あのときと同じだ…油断した! 俺はバカだ! 繰り返してしまった…また連れ去られるとは…)


 今度は取り返す! 水晶みあだけは守る!


 Diopside…『無色透明、黄緑色、緑色などで透明感があり、見る方向によって違った色合いを示す。石言葉は道しるべ』

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