第8話 Larimar
昼過ぎに起きてきたサナコ。
タケルがいることなど気にも留めない様子でショーツ1枚で身支度を整える。
(なんだかな…)
タケルが自身の存在を気づかせるように、コホンと咳払いをしてサナコに話しかける。
「おはよう…
「私…夜しか食べないの…仕事行くから…出てくなら勝手に出てって、オートロックだから鍵はいらないわ…居てもいいけど…食べ物なら冷蔵庫に入っているわ…じゃあ」
サナコはそういうと部屋を出て行ってしまった…。
(なんというか…)
改めて、部屋を見回すと、だだっ広いリビング、物は少なく整頓されているが…どこか生活感が無い。
高層階の窓から見下ろす東京の景色は『勝ち組』といった景観を醸し出す。
「さて…」
小さく呟いて冷蔵庫を開けると…入っている食べ物は『カロリーフレンド』・『大豆バー』そんなものばかり、調味料すらない。
飲料は炭酸飲料、こちらは豊富な種類が置いてある。
とりあえず、ボソボソと食べはするが…満腹感は得られない。
コーラを片手に室内を見て回る…寝室も広い…化粧品は豊富だ。
大きな鏡は自己愛なのだろうか、容姿には自信があるのだろう。
バスルームも広く、こちらにも大きな鏡がある。
(どんだけ、自分が好きなんだ…まぁ美人だよ…確かにね)
実は容姿に自信があるだけではない…手に入れた身体が嬉しくて購入したのだ。
その身体に様々な服を纏い、着飾ることを楽しいでいた時期があっただけ。
「いつ帰ってくるんだろう…」
夜の8時を過ぎた頃、空腹もあり出て行こうかと考え始めていた。
(しかし…不用心というか…金が余ってるんだろうか)
テーブルには、お札が10枚単位で束ねられている…パッと見300万はありそうだ。
TVを観ているとウトウトするのだが…空腹で眠れない。
10時過ぎにサナコが帰ってきた。
「おかえり」
タケルがソファからサナコに声を掛ける。
「……ただい…ま……まだ居たの…」
「あぁ…迷惑かとも思うんだけど…」
「別にいいわ…あぁ…食べる?」
サナコがタケルに、弁当を差し出す。
「ありがとう…腹減っててね…」
「どっちがいい?から揚げとハンバーグ…」
「ハンバーグ…いい?」
「どうぞ…悪ければ聞かないわ…」
「ハハハッ…そうね…そうだよね」
「居ないと思ってた…」
サナコがモソモソと弁当を食べながら呟いた。
「ん…なに?」
「なんでもないわ…」
「あ~!解った。この部屋…ゴミ箱が無いんだ」
サナコの部屋にはゴミ箱がない…ゴミはその日のうちにマンションのゴミ捨て場に持って行く。
「そう…変?」
「いや…変ではないけど…ね」
「ゴミは俺が捨てて来るよ」
「ありがとう…」
サナコはタケルが居ないと思っていた…けど…なぜか弁当を2個買った…それは居て欲しいと思ったから?
(まさか…ね…)
サナコは口にソースを付けたままゴミ捨てに行ったタケルの後ろ姿にフッと微笑んだ。
「ただいま…か…初めて言ったかもしれない…」
Larimar…『世界三大ヒーリングストーンの1つとされ、パワーストーン愛好家に人気がある、青いペクトライト。石言葉は安らぎ』
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