第4話 Andalsite
佐奈子の記憶には3人の特別な男性がいた…。
最近は彼氏と呼べる男性はいなかったようだ。
どの別れも「ツライ」で締めくくられている・・・にも関わらず3度も経験している…。
佐奈子が特別なのか?
ヒトとはこういうものなのか…なぜこうも矛盾しているのだろう…。
「恋」とかいう感情は、例外なく「ツライ」を伴う。
何を求めているのだろう…さっぱり理解できない。
孤独を嫌がるから身体を預ける…ただ気持ちがいいから?
快感で孤独を忘れるからなのか…忘れたいからなのか…。
「佐奈子…男は快感が欲しいから繋がろうとするだけだよ…バカだな…」
鏡に向かって呟くサナコ。
孤独を忘れようとする行為が『恋』
快楽を求める行為が『愛』
サナコはそう解釈した。
サナコの身体に指を這わす男は『愛』が欲しいのだ…サナコの愛が…。
だから与えてやる…サナコは唇で…しなやかな指で…。
身体は繋がらない。
佐奈子の記憶が邪魔をする…受け入れようとすると拒絶する。
残っていないはずの佐奈子の自我なのか…それとも深く刻まれた心の傷ゆえか…。
それだけはサナコの好奇心の邪魔をしている。
あるいは…佐奈子の自我が残っているのだろうか…。
自分の電源を自分で切ろうとした…というか切ったはず。
サナコが身体を手放せば、植物状態で身体だけが残されるはず…この身体は空っぽの器だ。
シナプスに食い込むことで身体を借りているだけのサナコにとって佐奈子の意識など邪魔なだけ…だから自ら身体を放棄するヒトに接触する、そのタイミングを待つ。
他の連中もそうだ。
産まれるはずだった…身体を取り上げられた自分。
「私たちには…その権利がある…」
TVで連続強姦の容疑者が逮捕されたと報道されている…。
どこかで見たような…佐奈子を犯した男に似ているような…。
サナコにとってはどうでもいいこと。
「アイツにも…その権利がある…」
手錠を掛けられ護送されていく容疑者の身体がガクンと崩れる…。
その目には紫色の涙が溢れ…頬を伝わり、地面に落ちた…。
「満足したのかしら…だといいけどね…」
サナコがTVのモニターを指でツツッとなぞる。
堕胎された意識の塊…漂うわけは羨望…希望…願望…。
混濁の意識は目覚める時を待っているわけではない…眠れる時を待っている。
なぜ漂うのかも解らないまま…いくつもの意識は纏わりついている…アナタにも…。
サナコもそんな意識のひとつ。
たまたま「死にたい」の想いに惹きつけられただけ…
「頂戴…いらないなら…頂戴…身体が欲しいの…お願い…いらないんでしょ」
欲しいのよ…『愛』が…。
知りたいのよ…『愛』を…。
Andalsite…『見る角度によって違った色に見える「遊色効果」が美しく並外れた多色性を持つ。石言葉は愛の予感』
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