第149話 外伝49.1972年頃 アメリカ合衆国

――1972年頃 アメリカ合衆国

 1972年時点での世界三大通貨は円、ポンド、ドルとなっている。

 紙幣の世界流通量比率でみると、日本の円が全体のおよそ四割で最大になり、続いてイギリスのポンドが三割、アメリカのドルが二割で残りがその他といったところだ。


 円は巨大な円経済圏を持つ。日本、ドイツ、オーストリア、ロシア公国、ポーランド、トルコ、北欧三ヶ国、イタリア、エチオピア、リビア、サウジアラビア、マダガスカル、チリ、西部アフリカ、マラッカ海峡より東の東南アジア諸国など世界各地で円が使われている。日本をはじめとした経済大国が多く含まれているのが特徴となるだろう。

 ポンドはイギリスとかつて植民地であった地域で構成されている。もちろん例外もあり、イギリスの植民地ではなかったがポンド圏に入ったのが中国大陸のチワン。元植民地であるが、ポンド圏ではない国がカナダ、西部アフリカ、南アフリカ共和国、ジンバブエなどになる。

 ドルは世界トップの経済規模を誇るアメリカに隣国のカナダ、中米地域、満州、上海、フィリピンなどが域内にあるが、円とポンドに比べると範囲は狭い。

 これ以外の通貨はソ連のルーブルやフランスのフランなどは多少流通している。


 ドルが全世界的に広まらなかった要因は欧州大戦以後、世界経済が構成されていく時代に孤立主義を貫いていたからだと言われている。

 ドルの世界通過量はそれほど振るわないといってもアメリカの経済は好調で、欧州大戦後から続く世界一位のGDPをずっと守り続けている。

 アメリカは分野によっては世界一の技術力を誇り、広い国土と豊富な資源を背景に世界シェアを伸ばし、欧州大戦で列強諸国が疲弊した結果、圧倒的な経済力を持つことになった。

 その後、日本をはじめとした円経済圏の進出やイギリスの復興によって、世界シェアは減り続けている。しかし、紛れもなく世界トップのGDPを持つのはアメリカなのだ。

 

 大規模農業用の工作機械、農業生産物、農薬などの農業関連品については世界の追随を許さず、軍用製品の輸出も日独墺英が自身の同盟国以外に輸出しないこともあって世界一のシェアを誇る。

 苦戦している分野ももちろんあって、代表的なのは民間用の「乗り物類」だろう。自動車では世界シェアの一割強、船舶ではシェアが皆無、大型旅客機では三割強と苦戦が続いている。

 医薬品のうち最先端のものはドイツ続いて日本に後塵をはいしているが、普及品についてはアメリカがトップを走っている。

 科学技術の分野で突出しているのはバイオ科学で、品種改良の技術力は世界を大きく引き離していた。また、最先端技術だとメインフレーム(コンピューター)を日独と共同で開発していて、こちらも世界トップ水準になっていた。


 アメリカはニカラグアと紛争を行ったりと、他の先進国と違い1950年以降も軍隊を出動させた経験を持つ。1960年代後半から続くSFブームにもその影響が出ているのか、異星人が地球に攻めてきて防衛する話や宇宙船同士が戦争する話などが流行を見せた。

 一方、娯楽に特化した作品も人気を博しており、圧倒的な力を持った超人――スーパーヒーローが倒壊しそうなビルを支えて子供を助けたりする物語が代表的な作品になる。

 

 他にアメリカに多い分野となると、小説作品が主になるが「もしアメリカが過去にこのように行動していたら、歴史はどうなったのか?」という架空歴史作品が他国に比べ圧倒的に多い。

 代表的なパターンは大まかに二つあり、一つはアメリカ圧勝パターン。もう一つはアメリカが南北に分裂するパターンである。

 

 アメリカ圧勝パターンは日露戦争前から始まることが多く、日露戦争で資金繰りに困る日本へアメリカが全額出資し、イギリスと共に戦争協力を行う。

 日露戦争後、満州利権を獲得し日本との貿易を強化する。世界恐慌が起こる前に中米各地へ圧力をかけ、世界恐慌が起これば中米地域へ軍を派遣し、軍需により恐慌を回復させる。

 日本やイギリスがアフリカや東南アジアに構っている間に南米に進出し、強固なアメリカ勢力圏を構築する。中国大陸で動乱が発生すると、豊富な軍事力を背景に介入し、満州国の名目で共産圏国家を制圧してしまう。

 オセアニアにも日英より先に手を出し、勢力圏に組み込めば、円経済圏に対抗しうる国家となるといった感じだ。また、日本とも日露戦争以来の付き合いとなっているので、一番の貿易相手国になっているという設定も多い。

 

 アメリカが南北に分裂するパターンはとても単純で、人種差別の深刻化から第二次南北戦争が発生。このままだと、人種差別撤廃派の北軍があっさり勝ってしまうので、人種差別派の南軍は陸軍将校がクーデーターを起こし軍を制圧し、戦争が始まる。

 レジスタンスとなった北軍はオーストリアを始めとした人種差別撤廃国家へ支援を求め、アメリカを舞台にした大規模な戦争に発展する。

 このパターンの場合は、いかに戦争をうまく書くかを主眼としており、多くの作品で戦争の詳細が描かれているという。実際に戦わなかった先進国の兵器が多く出て来て、つぶし合うのがヒットの原因と言われているのだった。

 

 アメリカは映画製作も盛んで、人気があるのはやはりヒーローが活躍する娯楽映画になっている。暗い雰囲気の作品は余り受けず、陽気なアメリカ人らしいと諸外国に言われているという。

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