四十七箇所目 農文協・農業書センター 神保町

 地下鉄神保町駅で降りて、階段を上って、上って、改札を抜けて、A6の出口を目指して、また階段を上って、岩波ホールがあるのを確認して上って、ようやく地上に出たら、すぐのドラッグストアに入って、左手にある階段を上って、二階を通り過ぎたら、足を緩めて、階段ギャラリーの写真や展示物を眺めながら三階へ。


 上って上ってようやく辿り着いたのは、日本で唯一と称する農業書の専門店。

 農文協・農業書センターです。

 本がもちろんメインですが、本以外のもの、植物の種や食用のキクイモチップ、農業書関連のグッズ、先日は多肉植物も並んでいました。


 地下から地上へ、そして、階上へと、ここまで上ってくるのに、大抵どこかで息切れします。

 本屋さんでのどを潤すわけにはいきませんので、店内に入る前、階段ギャラリーで水分補給をしてから、いざ中へ。


 一歩足を踏み入れて、まず、目に入ってくるのは、お目当ての雑誌『うかたま』です。


 「うかたま」というのは、穀物、食べものの神様の宇迦之御魂神うかのみたまのかみから生まれた言葉です。

 食べものの神様にあやかって、日本古来の食や暮らしを伝承文化として受け継いでいこうとする思いがこめられているそうです。


 『うかたま』は、実用一点張りのイメージの農業書のイメージを一蹴した、「まるごと、食べごと。」と銘打たれた「食」の情報の詰まった季刊誌です。


 全ページカラーで、見るからに美味しそうな食材や、おしゃれにセッティングされた料理の写真が、ふんだんに掲載されている贅沢な一冊です。


 ここ一年間の特集記事を追うだけでも、実際に作ってみたくなるバラエティに富んだ「食」を楽しむことができます。


「2018年 vol.51 特集:夏の草ノート 摘む・食べる・育てる」

 ・野草を暮らしにいかす

 ・ふるさとの夏草料理

「2018年 vol.52 特集:野山のナッツ 畑のナッツ 秋のごちそう」

 ・ナッツのごはんとおやつ

 ・木の実拾い入門

「2019年 vol.53 特集:冬のおいしい贈り物」

 ・自家製ギフトセット

 ・中川たまさんの冬の壜詰め

「2019年 vol.54 特集:青空おやつ つぼみを食べる」

 ・摘んでつくる

 ・ピクニックおやつ

 ・ピザ窯をつくろう


 いずれ劣らぬラインナップです。


 決して、ぎっちりたっぷりレシピが紹介されているわけではありません。

 それでも、バラエティに富んでいるので、読み終わる頃には、作りたいものの妄想がぽわぽわと頭の中に浮かんでいます。

 

 冬のおいしい贈り物には、福井県をはじめとした北陸の冬のお寿司、「いずし」の作り方も載っています。


 福井県大野市和泉地区(かつて穴馬と呼ばれていた地区)の「すし」の話

 『くちびるに甘し糀を 学校司書の不思議旅2』

  https://kakuyomu.jp/works/1177354054882091031


 そして、「とっておきのレシピ」のコーナーではドイツのクリスマス菓子「シュトレン」の作り方も。

 全6ページ使って、初心者でも作ることができるように、写真入りでしっかり作り方が解説されていました。


 今回求めた『うかたま 2019 vol.54』の中では、素朴でかわいらしい草花のおやつはもちろん楽しめたのですが、「春のつぼみを食べる」という記事に目をひかれました。


 畑で、一見菜の花かと思わせる、茎がひょろっと伸びた黄色い小花を見かけたことはありませんか。

 それは、白菜や小松菜などの、アブラナ科の花です。

 葉のうちに収穫してしまうので、市場ではめったにお目にかかれない花です。


 青年へと成長する前の子どもたちがはじけそうにまっすぐに元気いっぱいなように、花を咲かせるべく栄養を貯めているつぼみも健やかな力が漲っています。

 そうしたことから、春にはつぼみを食べるといいのだそうです。

 人も花も自然の中の存在なんだな、と実感しますね。


 記事の中で一番おすすめですと紹介されているのは、高菜のつぼみです。

 ピリッとしてツーンとくるので、天草諸島の上島かみしまでは「鼻はじき」と呼ばれているそうです。

 なるほど、ぴったりの呼び方ですね。

 

 さて、『うかたま』は季刊なので、うっかりしていると発売日を忘れてしまって、買いそびれてしまうことがあります。

 ネット書店では、需要があるのか、なぜか高値がついていたり。

 そんな時には、こちら農文協・農業書センターへ行けば、確実に手に入ります。


 バックナンバーや、別冊も置いてあるので、訪れた際には、立ち読みなぞをして、欲しい号を物色します。

 店内には椅子も置いてあるので、座り読みもできます。


 立ち読みして、散々っぱら物色して、長々と書店に滞在して、お財布と相談して、ようやく何冊か選んで、ほくほくしながら帰宅の途につきます。

 

 こうした本屋さん通いの豊かな時間を過ごすことが、この頃なくなってきたなと、本を抱えて電車に揺られながら、ちょっと寂しくなりました。


 


<農文協・農業書センター 神保町>

最寄駅 東京メトロ半蔵門線・都営地下鉄新宿線・都営地下鉄三田線 神保町駅


農文協・農業書センターのホームページで詳細をご覧いただけます。

http://www.ruralnet.or.jp/avcenter/


<今日買った本>

『うかたま 2019 vol.54』

一般社団法人 農山漁村文化協会刊


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