case5 新米探偵デビューの日❕

所長は、カフェ・マルシェにやって来た。

「いらっしゃいませ。」

「コーヒー、ブラックで。」

「かしこまりました。」

一番奥の窓際の席に付いて注文した。

コーヒーを待ちながら、片手に携帯を持って北山刑事に連絡をした。

「はい、北山です。」

「悪い、仕事中に。今、この前のカフェにいるんだけど、少し来れないか?」

「例の件か?」

「まあ、そうだが。」

「わかった。少ししたらいくよ。待っててくれ‼」

「すまない。」

そう言うと、携帯を切って、コーヒーをすすった。

暫くして、北山刑事がやって来た。

「わりぃ、待たせたな。」

「いや、何かそっちは進展あったか?」

「署に戻って行方不明者を検索したらかなりいてな、まだ絞り込めて無い。」

「仕方ないよ。他の事件も担当してんだから。」

「まあな。」

「引き続き、何かあれば連絡するよ。そっちは、何かあったみたいだな。」

「パソコンのネットで、気になるサイトを見つけてな、その相談だ。」

「ほう、さすが、仕事が早いな。で、何か掴めたのか?」

「それが、ログインするのにパスワードがいるらしくて、入れなかった。」

「そうか。まあ簡単には行かないわな(笑)。」

「そのサイト名が、"なまけものサイト"って言うんだが知らないか?」

「聞いたことないな?あのマスコットがキーワードなのか?」

「多分な。」

「この件は、俺とお前だけの極秘だから、どうすんかな?」

「その手の上手いやつ知らないか?」

「う~ん?いるにはいるけど、めんどくさいやつだからなぁ?」

「今度、酒でもおごるから頼めないか?」

「聞いては見るけど、そう言う面倒じゃなくて、くそ真面目なんだ。サイバー対策課にいるんだけど、どうかな?」

「頼むよ。何でもするから聞いて見てくれ。」

「わかったよ。俺もこの件は、気になっているから聞いてみるよ。口、固いやつだから信用はできるやつなんだ。」

「ありがとう。」

「あのマスコットだが、科そう研の知り合いに預けてある。そいつも秘密重視だから心配すんな。結果が出たら連絡するよ。」

「何から何まですまないなぁ。」

「いいって事よ。いつになっても相棒だからな。その代わり、他の事件で煮詰まったら助けてくれよな。」

「お安いご容態。(笑)」

「でも、何で、"なまけもの"なんだ?」

「さあなぁ?これから調べれば、わかって来るよ。」

「木下さんのお兄さんは、見つかったのか?」

「いや、まだだ。彼女にも聞いたが、連絡も無いらしい。」

「そうか。まいったなぁ?」

「もう少し、マスコット関連で家出人を絞り混んでみるよ。じゃそろそろ、署に戻るわ。あんまり長居したら、怪しまれるからなぁ。」

「わかった。又何かあれば、連絡するよ。そっちも連絡頼むよ。」

「じゃ。」

そう言って、北山刑事は、店を出て行きました。

その頃、和頼君は?

*********************************************

駅前で、チラシを配りながら、マスコットの情報収集をしていました。

「すいません。このマスコットに見覚え有りませんか?」

「無いね?」

「そうですか?ありがとうございました。」

なかなか収穫は、なさそうです。

何人かに話を聞いて、事務所に帰ろうとしたその時、とうりすがりの大学生らしい女性にすれ違いました。

その女性の鞄には、あの"なまけもの"のマスコットがぶら下がっていました。

「すいません。ちょっと良いですか?」

「何よ、いきなり。」

「ごめんなさい。その鞄にぶら下がっているのは、"なまけもの"ですよね?」

「そうだけど。何?」

「それ、何処に行けば貰えますか?友達が欲しがってて。」

「なーんだ。あんたも欲しいの?やっぱ可愛いよね?」

「そうそう、可愛い。」

「これね、今学生の中で流行って、私も友達に貰ったんだ。」

「そうですか?その友達を紹介して欲しいんだけど、駄目かな?」

「良いよ。あんまし、大学に来ない子だけど、又今週中に来たら連絡してあげる。」

そう言うと、その女の子は、僕の携帯をポケットから抜いて、自分の番号を鳴らして来た。

「じゃ、今から講義が有るから又電話するね。それと、私の名前は、里子(さとこ)って言うから。」

そう言って、僕に手を振って言ってしまった。

とっさの出来事にビックリしたが、かなりの収穫を得たみたいです。

早く事務に帰って、所長に電話しよっと。


今日は、僕の勝ちみたいです。

新米探偵デビューの日でした。






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