第18話

ナキ兄の頼みはシンプルでわかりやすかったが、実に面倒だ。

本人に聞け、という話だが、本人に聞いたらきっと断るだろう、というのもまた事実だから仕方なく引き受けることにした。

「じゃあ、いってらっしゃ~い。」

「朔、留守番頼んだよ。」

「うん。ゆーちゃん、この家金持ちだから何でも言うんだよ~。」

「お前が言うな、朔。」

晴が朔ちゃんの頭をはたく。晴はこういうところがよく母さんに似ているし、朔ちゃんの頭の緩さは、晴がはたきすぎるせいではないかと時々疑いたくなる。

「朔ちゃんは冗談としても、遠慮はしなくていいからね、歩さん。」

「はい。」

歩は朔ちゃんに抱かれているよもぎをなでながら笑う。

運転席に晴、助手席にナキ兄、俺がどこに座ろうかと悩んでいる間に、真冬がさっさと後部座席を倒して、後ろに回る。

「愛希兄さん、僕こっち居るから。」

「お、おお。」

真冬のいじった座席を立てて、乗り込むと、歩も後をついて乗ってくる。

「真冬君、私そっち乗りますよ?」

「いいよ。気にしないで。」

真冬はもうマイペースにイヤホンを突っ込んでいる。あれは気を使ったんではないな。

「いいよ歩、座りな。」

晴が助手席から声をかける。

「いろいろ買い物あるからモールになるけどいい?」

「はい。問題ないです。」

「晴、ついたら愛希借りるから。荷物増えたら呼んでくれる?」

「…了解。」

「俺は荷物持ち要員から逃れられないのな。」

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