第14話
次の日の昼前に、痛む頭と寝ぼけた体を引きずってリビングに行くと、休日の昼間だというのに、母さん以外の全員がそろっていた。
ソファに寄り掛かっていたナキ兄が、笑いながら声をかけてくる。
「おはよう、愛希。ねぼすけだけど、ラッキーだよ。」
見ると真冬はまだリビングのソファで眠っている。
「ほんとだ。」
ぼーっとした顔でダイニングに座っているところを見ると、歩もまだしゃっきりはしていないようだ。
「歩、覚えとけ。飯を作るのは、基本的に手が空いたやつで、冷蔵庫の中身は名前が書いて無ければなんでも使ってよし。一応俺達全員できる。歩も家事全般できるんだろう?」
「人並程度には…。」
「男所帯だし、適当でも誰も文句は言わねえ。でも、片付けと買い出しは、日曜に一番遅く起きてきたやつ、っていう決まりだ。」
キッチンで何やらごそごそしながら晴が説明する。
「もちろん、事情は考慮するけどね。みんな生活パターン違うし。まあ、一週間一番割を食う、くらいのことだよ。誰かに雑用させるときに選ばれるくらいに思っていてくれればいい。」
「今週は真冬だな。俺ラッキー。」
「まあ今回は俺と奈月が悪かった面があるから、ちょっとずるいけど。真冬も運が悪かったってことで。」
「あいつ朝弱いけど、いつも日曜ばかりは必死で起きてきてるのにね。今週ばかりは無理だったみたいだね。」
「真冬は不器用だからな。というか、今日は寝坊してももっと愛希が遅いと思ってたんだろう。読みが外れたな、真冬。」
いまだにソファで幸せそうに寝こけている真冬に、3人の兄は割と残酷だ。
3人も兄のいる末っ子のくせに、いや、だからか真冬は強かでクールに甘えてくる。そんな真冬はいじましいけれど、年の近い弟にそこまでの愛情は感じない。
「でも、残念ながら真冬をそろそろ起こせ。特製ドリンクができたからな。愛希、歩お前らの分もな。」
「一番無慈悲だよね、晴が。」
「バカ言え。これ効くんだぞ。二日酔いにも抜群だ。」
「んなもん、ほぼ青汁だろ。」
グラスに注がれたのは、明らかにスムージーを越えた何かである。何が入っているかは聞いたら絶対に飲めない。でも、飲まないと終わらないのは経験上知ってる。
今まで数えるほどしかないが、ナキ兄がべろべろになったときも次の日の朝、いい笑顔で晴がナキ兄に飲ませていた。
「これ、キッツいんだよねえ…。」
ナキ兄は苦笑いを浮かべながら真冬を起こす。
「ある意味、寝起きで頭が働かないときのほうがいいかも。」
真冬は目をこすりながら、目の前に置かれたコップを見つめている。
「真冬。今週お前だから。」
「え、愛希兄さんもう起きてるの…最悪。」
「最悪ついでに行くぞ。歩も。」
歩のほうに目をやると歩も苦笑いを浮かべながら頷く。
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