第4話
全員がそれぞれに不安を抱えながら、部屋を片付け、迎え入れる日が来た。ナキ兄にも言い含められていたが、母さんからも厳命がくだり、全員がそろった次第となっている。
「歩。着いたわ。」
母さんの声が聞こえたと同時に、扉が開き、入ってくる二人の影。
「初めまして。長倉歩です。よろしくお願いします。」
頭を下げる短い黒髪の小さな少女。声は落ち着いていて、ぱっと見は少年のようで。それでありながら、色香のような危うさを備えている。似ているはずのない父さんと同じ匂いがする気がした。
「初めまして。長男の奈月です。男ばっかりで悪いけど、どうぞよろしく。」
「次男の晴。っても奈月とは双子だけど。ほとんど似てないし、同い年、ってだけなんだけど。」
「三男愛希。」
「四男真冬。唯一の年下。」
「まあ、これがうちのむさくるしい男どもね。打ち解けようと無理はしなくていいけど、よろしく。学校は愛希と真冬の通ってる学校に編入するから、愛希に聞いてね。」
「聞いてないぞ!?」
「言ってないもの。」
驚きの発言に淡々と返される。
「歩はもう大学決まってるし、所詮はつなぎに過ぎないわよ。」
「え、決まってるの?」
「ええ。優秀ね。」
我らが母親は合理化の権化である。
「じゃ、私仕事に戻るから。奈月、晴。あとよろしく。…歩、何かあったら何でも言いなさい。」
「はい。ありがとうございます…。」
母はふむ、と頷いて。
「志岐のことはなんて呼んでた?」
「おじさまのことですか?…志岐さんです。」
「だったら私のことも静さんでいいわ。戸籍に入っているわけでもないし、母さんと呼べとは言わないわよ。」
呼び名に詰まったのを察したのだろう、こういうところができる女である由縁なのかもしれない。
「落ち着いたら、ちゃんと、家探しますから。」
「…そんな気にしなくていいのよ。しばらくはぼーっとしてなさい。」
「はい。」
「疲れたでしょう?部屋に案内するよ。」
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