第3話

「結局一緒に食べるわけではねえんだな…。そして奈月、鍋なんだな…。」

晴の希望を汲んだような汲んでないような、料理に、晴はため息をつく。

「いいじゃん、晴兄さん。僕たちもう誰も母さんと一緒にご飯食べたい、って年でもあるまいし。」

「そりゃそうだけどよ…。」

「全員そろう日が僕の当番でよかったよ。僕、大体大鍋で適当に作っちゃうから。」

「奈月兄さんって、顔に似合わない大胆な料理するよな。」

「不器用なだけだよ。」

ナキ兄はそう笑うが、弟たちは誰一人として、不器用だとは思っていない。この人は割と油断できない。

「さて、お前たち。」

笑顔を浮かべたまま、長男の顔になるナキ兄に全員が背筋を正す。

「晴が言った通り、男所帯に年頃の女の子を急に入れることになる。事情も事情だし、不安も大きいだろう。とくに、愛希。」

「俺かよ…。」

「お前しかいないだろ。」

「愛希兄さんが一番危ないよね。」

「ハイハイ、わかりました!」

なんで俺にここまで信用がないのか。

「愛希はもちろん、僕たち全員、怯えさせないように。幸い一人女の子が増えたところで困らないしね。説明がややこしいから、彼女の引っ越しが決まったら、その日は出来るだけ空けるように。わかったか、愛希。」

「やっぱり俺ばっか…。」

「晴と真冬はそういう面では心配ないんだよ。ああでも、真冬。」

「何?」

「漫画はきちんと部屋に引き上げるように。」

空き部屋ののほとんどを埋め尽くしているのは、真冬がため込んだ漫画だ。である。俺たちのものもないわけではないが、真冬が一番多い。

「…はーい。」

「…不安だ。」

晴の頭を抱えそうな言葉で、その日の晩餐は幕を下ろした。

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