File02 学内恋愛デスゲーム連続殺人事件w

02-1 ロコツなガールズトーク

「なあレイリィ。男ってみんな、あんなんなのかよ」


 柄にもなく、リンちゃんが溜息を漏らした。ここは神明学園男子寮寮母室。陰謀に巻き込まれたリンちゃんとの命懸けの決闘。あれをクリアして数日後、みんなでさっきまでここで話してたんだよ。でまあ、伊羅将くんとリンちゃんが微妙な雰囲気になっちゃって……。


(わかりにくかったらゴメンね。↓ここの一時間後だよ、今)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054883225645/episodes/1177354054885075319


 伊羅将くんは涙目でどこかに行っちゃった。微妙な空気になったせいか、みんなももう誰もいないし。私とリンちゃんだけは残ってる。今晩、伊羅将くんの夢に出る算段があるからね。


「あんなって、なんのこと。リンちゃん」

「アレだよアレ、レイリィ。カタくなるとは聞いてたけどよ、木の枝みたくガチ固いもんだとは思わなかったからさ」


 伊羅将くんが花音ちゃんと関係を持ったことを悟ったリンちゃんは、お仕置きとして、伊羅将くんのアレを取り出して噛み付いた――んだけど、なんか伊羅将くん、固くしちゃってさ(笑)


 男ってダメだよね、こういうとこ。まあエロ一族、物部家ならではのことかもしれないけど。お仕置き好きなとことか、実はMかも。陽芽ちゃんと同じで。


「まあ、固いのは普通みたいよ。根付の中で見てきただけで、私も実際には触ったことないけどね、はあ」

「それに……その」


 思い出したのか、リンちゃんの頬が赤くなったわ。


「あんなにすぐ出るんだな」

「リンちゃん。飲んじゃったもんねえ……」

「だってよ。咥えた途端だからな。まさか噛み付かれて出すとは思わなかったし」


 心底意外そうな声だし。そりゃそうか。


「ねえねえ。どうだった」

「どうだったもくそも……。ねっとりして熱かった、としか」

「味は」

「苦い。……それよりレイリィ、あれ、ソーローって奴だろ」


 あらーリンちゃん露骨……てか、興味津々ね。


「溜まってたのもあると思うよ」

「溜まる?」

「そう。伊羅将くん、最近決闘だなんだで、心労ハンパなかったじゃん。ひとりエッチも、随分してなかったと思うしさ」

「それ、溜まるって言うのか」

「溜まるとさあ、寝てる間に勝手に出たりするんだよ。……まあ一部は、私たち仙狸が夢で絞った結果だったりするんだけどさ」

「へえ」


 唸ってるわ。


「それに伊羅将くん。口でアレっての、実はすごい好きみたい」

「なんで知ってるんだよ」

「根付の中から見てたわけよ。伊羅将くんがエッチに目覚めてから、ネタ画像はだいたいそっち方面だったし」

「へえ」

「でまあ、私が復活して伊羅将くんと国光くんにこんにちはしてからは、見られるのを警戒して、ひとりエッチのときもお上品な画像見てんの。芸術ヌードみたいな奴。笑っちゃうったら」

「そりゃ受けるな」

「そうだ決めた!」

「なんだよ叫んだりして」


 リンちゃん、びっくりしてるわ。


「私今晩伊羅将くんの夢に出たら、そのセンで行くわ」

「……えーとその……口でってやつか」

「うん。それならほら、エッチが怖くてもできるじゃん。それでいてもちろん、生命力をもらえるし。一晩中しちゃえば、もう仙狸せんりパワー、完全復活だよね。私天才! ……だからリンちゃん悪いけど、今晩は私だけ夢に出るから。リンちゃん同伴出勤は、また今度ね」

「まあいいけどさ」


 リンちゃん、溜息ついてるわ。


「伊羅将にヘンな性癖、埋め込み過ぎるなよな。あんなんじゃ心配じゃん。将来、あたし、子作りできるのかな。伊羅将と」


 随分先走ってる……てか飛ばすね、リンちゃん。さすが、処女のくせにもう咥えただけはあるわ。


「大丈夫じゃないの……はあ」

「どうして言い切れるのさ」

「うーん……経験によってというか……」


 私は説明した。江戸時代末期、根付に封印されてから百数十年。根付の中から、物部家惣領のエッチな行為を、一万回は見てきた。それによると、物部家はみんな早い。すぐ出ちゃう。その代わり――。


「その代わり、何回もできるの。あれはスゴいわ。特殊能力ね。初代の吉嗣くんなんて、ひと晩で十回以上したことが、何度もあるもん」

「マジか」

「ええそう」

「伊羅将の一族が絶倫狼男だったとは……」


 絶句してるわ、はあ。


「んじゃあ一度出ちゃっても、すぐまた復活するんだな」

「そうそう。だから安心していいんじゃない。……むしろ一晩中攻め立てられて、痛くなることとか心配したほうがいいわ」

「そもそも初めてのとき、すんごく痛いんだろ」

「母上に聞いた感じではあ……」


 リンちゃんの手を取って、思いっきりつねった。


「痛いじゃんか、アホ」


 手を引っ込めたわ。


「こんくらい痛いってことか?」

「ううん。これの十倍だって」

「マジか……。よく花音様、我慢できたな。伊羅将とやったんだろ、もう。……さすが王族」


 ヘンなところで感心してるし。


「あたしだったら、暴れて噛み付いちゃうかも」

「平気平気。ナベシマ族は戦闘部族でしょ。戦場での切った張ったよりは痛くないじゃん」

「それもそうだな……。おっ、それなら思いついたけどさあ」


 悪い笑顔になった。


「あたしとした後、レイリィとすることだってできるんじゃないか。伊羅将、一晩で何度でもできるんだろ」

「そうねえ……」


 過去のあれこれを思い返した。


「大丈夫でしょ、普通に。二代目の公春くんなんか、遊女を八人も侍らかして、夜通し、組んずほぐれつしてたしさあ」

「それなら、あたしが痛くて困ることもなさそうだな。とりあえず彼女たるあたしがまず種をもらって、後はレイリィとか姫様に譲ればいいんだな」


 その光景を、私は想像してみた。したら噴いちゃったわよ。大笑いじゃん。


「順番は揉めそう」

「それはくじ引きだな」


 さすが単細胞突撃ネコネコマタ。一刀両断だね、リンちゃん。


「当番制でもいいぞ。……あたしは燃えるゴミの日だ。レイリィと姫様は燃えないゴミの日」

「それ、ひどくない?」

「ゴミ出しがない日は、伊羅将禁欲だな。そんときは夢の中でレイリィがしていいぞ。……あたしもタマには連れてけよ。ふたりで襲いかかったら、伊羅将のスケべ野郎、大喜びだろ」

「うーん……。また瀧くんに軽蔑されそう」

「平気だよ。あんなナヨナヨ。それにお家再興のことしか考えてないしな、あいつ」

「それもそうか」


 瀧くんは、クルメ族は没落貴族の一粒種。一発大逆転を狙う関屋家が、ない金を工面して、王宮での貴族鍛錬に送り込んできた。伊羅将くんと知り合って結果的に花音ちゃんや陽芽ちゃんの知人になれたんだから、ご両親の目論見は、まあまあ成功ってとこじゃん。


「それよりよう。夢探偵の依頼、また来てるんだろ」

「ああそう。忘れてたわ」

「早く教えろよ。あたしも、悪党倒したくてうずうずしてるしよ」

「今回は退治は関係ないかも」

「んじゃあ、なんだよ」

「依頼主は、国光くんよ」

「クニミツ……。伊羅将の父ちゃんだな」

「うん。そう」


 私は説明したわ。結構前だけどサシで飲んだとき、国光くんに懇願された件を。それはもちろんというか、いかにも物部の殿方の頼み事なんだけど、早い話、彼女が欲しいと。できれば巨乳でかわいい娘。


「なんならレイリィちゃんでもいいけど……」って色っぽい目で見られたけど、それはていねいにお断りしといたわ。なにせ今は伊羅将くんの契約者だからさ。伊羅将くんが死ぬまでは、他の男と関係持てないから。


 仙狸は淫夢を司る妖怪。契約者の精をもらって命の糧にするからね。契約者ひとすじ。淫魔だから勘違いされがちだけど、実際は一途な純情派だからさ。契約者が死んだときだけ、仕方ないから他の男を探すんだよ。そうしないと死んじゃうから。


 その後の決闘のドタバタで、すっかり着手が遅れちゃってるってわけよ。


「どんな女を探せばいいんだよ」

「年上好みの娘がいい……って言ってたから、年下探せってことでしょ。神明学園の生徒でもいいってさ」

「おっさん……」


 リンちゃんが噴き出した。


「歳考えろよな。あいつ、四十かそこらだろ」

「それ言ったらかわいそうだよ。私、彼が数え十五の歳から見てきたけどさあ、奥さんに逃げられてから、男手ひとつで、伊羅将くんを必死に育てたんだからね」


 根付から見てきたその姿が、蘇った。


「あのスケベな物部家の男なのに、彼女も作らないでさ。これってスゴいことなんだから」

「そういやそうか。……悪いこと言っちゃったな。おっさんに」


 ペロッと舌を出したわ。


「んじゃあ罪滅ぼしに協力するか。……で、レイリィ。誰かアテ、あんのかよ」

「ひとり考えてる娘がいるのよね。神明学園関係者で。……といっても、学生じゃないよ」

「ひひっ。面白くなってきやがったぜ。早く話せよ。エロ妖怪」


 あらーヘンな笑い方で鼻息荒くしちゃって。リンちゃんも好きねえ……。


 私は、候補の女子の名前を挙げた。リンちゃんも知ってたわ。当然だよね。どんな学生も、毎日のように会ってる人だし。


 翌日、フルパワーに復活した私は、さっそくリンちゃんと一緒に活動開始したよ。学園お悩みごと解決処、夢探偵レイリィとしてね。でもそれが、意外な展開でタイヘンなことに……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る