6.里奈の部屋
その日の帰り、俺はいつものように自分の家よりも先に里奈の家に向かった。
「おばさん、ちょっと邪魔するで」
「はいはいいらっしゃい。あ、もしかすると里奈、今寝とるかもしれへんわ。聡ちょっと起こしたってくれへん?」
幼稚園の時からほとんど毎日通いつめているせいか、おばさんは俺が勝手に上がってももう何も言わない。要するに絶対的な信頼が俺とおばさんとの間にも出来ているのだ。
これを里奈との深いつながりと言わずしてなんと言う、といった状況だ。
そんなことはさておき、俺は例のごとく里奈の部屋に行く。一軒家の二階の奥にある里奈の部屋を開けば、里奈は制服姿のままベッドに横になっていた。
俺が部活中の時に「家の用事で先に帰る」と言ってきた里奈だが、こうして寝ているところを見ると、本当に家の用事だったのか、というところが引っかかる。
俺に何か隠し事をしているのではないか?
そう考えて俺は首を横に振る。
何故ならば、俺と里奈は考えることが同じなのだ。そんなわけがあるまい。
いや、でもしかし、かつて小学五年生の時は、里奈は俺に見つからないよう色んなものを隠していた。
最近はそういうことも減ったが、もしかしてまたどこかに何かを隠しているということだろうか?
俺は里奈の部屋を見渡す。
里奈の部屋はぬいぐるみや置物が棚や出窓に飾られていて、女らしい部屋になっている。正直俺としてはこの部屋の有様も面白くない。何故なら俺の部屋とは違うからだ。
だからこの部屋に飾られているもののいくつかを、俺の鞄にしまう。
そうして次に視界に入ったのは里奈のタンスだ。
そういえば最近里奈のタンスの中がどうなっているか確認していない。俺はすかさず引き出しを開ける。
下から一段目と二段目には里奈の私服が入っている。気が付けば随分女らしい服が多い。まぁこれはよしとしよう。これらはすべて里奈の魅力を引き出すから問題ない。
一番上の引き出しを開けば、里奈の下着が敷き詰めて入っていた。これも私服同様、少し見ないうちに随分と女らしい下着が増えている。フリルの付いた上下セットにリボンの付いたパンツ。柔らかい雰囲気の花柄のものに、クールな黒の下着。あくまで服の下に付けるだけのそれなのに、まるでファッションの一つかのように揃えられていることに、俺は引っかかりを覚える。
一体誰に見せるのかと。
そう考えたら里奈がけしからんものを持っているような気がして、俺はその中でも派手めの下着をいくつか自分の鞄の中に入れる。
ひととおりの物色が終わると、俺は里奈を起こそうとベッドに近づき、身体を揺さぶる。
「おい里奈、もうすぐ夕飯やってよ」
しかし里奈は寝言を言うばかりで起きる気配がない。
そのまま里奈は寝返りを打つ。
身体全体を左側に傾かせながらも、顔は右を向き、右手が口元にかかる。薄く開いた口から規則正しく寝息が聞こえてくる。足は左向きに曲げられながらも、若干ベッドより浮いていて、制服のスカートが少し腿の方へずれている。
この姿を見て、俺は思わず生唾を飲み込んでしまった。
里奈が可愛くて、色っぽい。
いや、里奈が可愛いことは俺は昔から知っている。
そもそも俺の里奈が可愛くないはずがない。
だから尚更その身体がどうなっているのかは気になるところだ。
俺はもう一度生唾を飲み込む。
どうした俺、何を躊躇している?
里奈と俺は考えることが同じなんだから、俺が里奈の身体を確認することも、里奈にとっては本望のはずだ。それに里奈の身体は俺のものでもある。
そうだ、何も躊躇することなどないだろう。
俺は里奈が寝ているベッドに体重をかける。
ベッドがギシと音を立てる。
俺はそのまま里奈の首元を巻いている制服のリボンを引っ張る。少し力をかけただけでシュルッとほどけたそれをベッド下に落とし、第二ボタンまで閉められているブラウスに手をかける。一つ、一つとボタンを外せば、黒いキャミソールが見えてきた。
そこから伸びる首筋に、俺は何度目になるか分からない生唾を飲み込む。
「うん……聡? 何やっとん……?」
そこでちょうど里奈が目を覚ます。
まだ眠たそうにまぶたをこすりながら顔を上げた里奈は、自分の胸元の方へ視線をやる。
「えっきゃああああっ!!」
その瞬間、頬に里奈の平手打ちを思いっきり食らい、ベッド下に落とされた。「何やっとるんや!」と興奮した様子で里奈が俺に怒鳴りつけてきたので、「里奈の身体を確かめとるんや」と普通に返せば、里奈は更に俺に枕をぶつけてきた。
その後、里奈の悲鳴に駆けつけたおばさんにも意味不明にもこっぴどく説教され、俺はしばらく出禁を食らう羽目になってしまった。
仕方ない。
大人しく里奈の部屋から没収したものの処理方法を考えるとするか。
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