第33話 かつて考えたこと

 おれが二十七歳の時に気絶しそうなほど精神に衝撃を受けた原因は、「愛など儒だ」ということばを教えられ、それは儒教に関する古典知識だったのだけど、おれはその古典知識とは関係なく、ある思想にたどりついたからである。

 それは、恋愛という概念に関わるものがすべてが人類をだますための誰かの謀略なのではないかというものだった。

 何千年も前から語り伝えられてきた恋愛物語のすべては、若い男女の性欲の発現を遅らせるために恋愛という手続きを経なければならないと思わせて、生殖に不必要な思想を習慣化させている謀略だと考えた。謀略を知っている者たちは、恋愛の習慣にとらわれることなく、自分たちが性欲によって有利に異性を手に入れることができるのだ。

 恋愛に関わるすべては、性欲を遅滞させるための謀略であると、そういう悟りを開き、すべての恋愛文化を疑って、とうとう女とやりまくることができた。それがおれの全盛期である二十七歳から二十九歳までのことである。

 「すべて恋愛文化は人類をだましてきた嘘である。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る