第8話 おれの人生
おれは小学校五年生の時に憲法を授業で習い、最高裁判官は良心にもとづいて判断すると聞いていたので、「良心に背かない行為は許される」「良心に従っていればなんとかなる」と思い生きてきた。人生の節目節目でそれを口にしてまた書いてきた。
それがどうも、口づてに聞いた者によると「両親に背かない行為は許される」「両親に従っていればなんとかなる」と思って生きているという最低な価値観をしたやつと思われて、なんとなく避けられていたというのがおれの人生だったようだ。
統合失調症とは関係ないが、おれの人生を漠然と覆っていた正体不明の敵の正体とは、この聞きまちがいであるらしい。
人生をどれだけ検証してもどうもおれは理不尽に不利な立場にあると考えていたが、その正体は、特に誰が悪いのでもなく、良心と両親を聞きまちがえた人たちの勘ちがいの集積であるようだ。まちがいに気づいた人も特にぼくを助けてはくれなかった。
このくそつまらなくてくだらない何にも面白くない勘ちがいが、ことばのすれちがいがおれの人生をおおっていた漠然とした敵であった。おれはその結果、孤独になり、人付き合いが苦手になり、本を読み、ネットに向かい、孤独になった。それが三十九歳までつづいた。勘ちがいしていた人物は確実には三人はいて、想定されるだけでは七人くらいいて、なぜか親を利用しておれに嫌がらせをするという人生を通して共通した敵は、おれが「良心に従い生きている」から「両親に従い生きていられる」ようにさしむけてくれた悪意ある善意なのであり、すべてが勘ちがいであった。
将来の夢を嘘をついて「有名になりたい」とか心にもないことを書きつづけたおれの人生は、最悪であり、つまらなかった。そのままストレス過剰で統合失調症を発症してくたばった。それがおれの人生だった。三十九歳で気づいた。おれはただ勘ちがいされて避けられていたのだということに。
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