第60話 勝負のはて

「ああ、そうだ。僕は沢山の一般人を巻き込んできたよ」

 僕は目の前のいる僕の分身に言いました。

「まあ、そうだな。けど、気にするな。誰もお前のせいだとは思っちゃいないさ。というか、気がついてもいないさ」

 僕の分身が言いました。

「そうだけど、けど、僕の気がすまない。僕はもう一人の僕である君を倒すよ」

「そうか」

「ポン!」

 僕の右隣から白い女学生の声がしました。

 白い女学生は白を三枚卓に並べました。

 そして一万切り。


 勝負が終わり、僕達は雀荘を出ました。

 雀荘の前には荒野が広がるばかり。

「ふ」

 僕の分身は唇を曲げて笑いました。

 そして僕達にすすけた背中を見せて、彼は荒野に向かって歩きだしました。

「ゴフ!」

 すぐに彼は血を吐いて、そして膝を地につき、そして前のめりに倒れました。

 荒野にはひゅーひゅーと風が吹くばかり。


「さあ、行きましょう」

 白い女学生が言いました。

「ああ」

 僕は二人の白い女学生に腕を取られて歩き出しました。

 僕もまた、何もない荒野へと向けて。


 おわり。

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巻き込まれる一般人 朝野風 @tennerinto

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