第59話 生贄

 チャンチャカチャン、ドンドン。

 チャンチャカチャン、ドンドン。

 その祭りばやしはドンドン近づいて来ました。

「おおおおおお、白蛇様、お怒りを鎮めたまえええええ」

 もの凄く年老いた巫女が数珠を振りかざしながら歩いて来ました。

 その後ろには爺さん婆さん達が神輿をかつぎ、その回りを踊っていました。

「こら!お前達も踊れ」

「はあ」

「白蛇様が600年ぶりにお怒りじゃあ!早う、こっちゃ来て踊れ」

「お、踊りですか?」

「そうじゃ。神社の夏祭りで踊るあの踊りじゃ、さあ、早う」

 僕が踊りだす前にもう一人の白い女学生は笑顔になって踊りまくっていました。

 僕と生徒会長は爺さん婆さんに混じって踊り始めました。

「数が足らーん!もっと若者を引っ張ってこい!」

 爺さん婆さんに手を引かれて生徒達が踊り始めました。

「まだまだ足らーん」

 僕の隣で踊っていた生徒会長は携帯電話を取り出しました。

「ピンポンパンポーン。全校生徒に連絡です。全校生徒に連絡です。今からグラウンドに集合してください。そして、白蛇様のお怒りを鎮める踊りを踊ってください。繰り返します・・・」

 そんな、校内放送がかかりました。

 すると、さすがに訓練された我が学校の生徒達はわらわらと現れ、神輿を中心にぐるぐると踊り始めました。


 巨大化した白い女学生と睨み合う赤い巨大宇宙人。


「駄目だ!イケニエが要る!」

 年老いた巫女が言いました。

「若い、白蛇様の好みの男を連れてこい!」

 その声を聞いて、学生達はすぐに僕を拘束しました。

「さあ、神輿の上にその男をくくるのじゃ!」

 神輿の上に突き出た十字架に僕はくくられました。

「ちょ、ちょっと、待ってくれえええ」

 僕は叫びました。

「アーメン」

 年老いた巫女と学生達が十字を切りました。

「まてまて、宗教違うんじゃねえかああああ」

 と僕が叫ぶ間に、神輿は「わっしょい!わっしょい!」と乱暴に揺らされていました。

「うわああああ!助けてくれええええ!」

 僕が叫ぶと、ドシーンと近くで音がして、激しい風が吹きました。

 神輿の動きは止まり、僕は風の吹いた方を見ました。

 そこには巨大な白い女学生の足がありました。

 その上にはこちらを見ている白い女学生の顔がありました。

 巨大な白い女学生の手が伸びてきて、僕をつまみました。

「白蛇様が、イケニエをお受け入れになられたぞおおおおお!」

「うおおおおお!」

 下の方では人々が盛り上がっていました。

 つまみ上げられた僕は巨大な白い女学生と共に巨大な赤い宇宙人と向かい合っていました。

「ジュワッ」

 何かに納得した様に頷くと、巨大な赤い宇宙人は飛んで行ってしまいました。

 巨大な白い女学生は回れ右をすると、山の方に向かって歩き出しました。

「ばんざーい!ばんざーい!白蛇様ばんざーい!」

 僕達の足元で民衆の声がしていました。

 遠近法で姿が小さくなるように、一歩一歩白い女学生は小さくなっていきました。

 校門の近くまで来ると、白い女学生は元の姿に戻っていました。

 キーンコーンカーンコーン。

「あ、昼休み終わった」

 僕と白い女学生と他の学生は校舎に戻りました。

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