それは、人の時代が訪れるより前の物語。
ルウィンと呼ばれる不老長寿の小人族は、
毎日楽しく遊びながら暮らしていたのだが、
あるとき旅行者が登場し、物語が動き出す。
例えば『指輪物語』『はてしない物語』『ゲド戦記』のような、
児童向けハイファンタジーと銘打たれながら大人も夢中になる、
作り込まれた世界観と簡潔な語り口、容赦のないストーリー。
人の時代が勃興したころ、世界はまだ伝説の存在を留めていた。
24行から成る手紙の謎解きに始まり、ルウィンの消滅のこと、
3人の旅人がもたらす世界の歴史と情報、異種族との出会い。
物語はやがて、急速に発展して「国」を作り始めた人間へと
その主役を交代し、人間と悪魔との壮絶な戦いが描かれる。
話数は多いが1話あたりの字数は少なく、改ページが効果的で、
気が付けば、次へ次へとページを送って読みふけっていた。
ウェブで流行中の異世界転移・転生や異世界お仕事ものではなく、
古典的な正統派であり、中世以前の世界観を持つファンタジー。
イマドキの異世界ファンタジーに疲れたり飽きたりしている人へ。
ホビットではなくルウィン、トロールではなくキリス・ギーと、
名詞ひとつ取っても少しも安直ではない、丁寧に書かれた物語が、
ここにあります。古き良き物語をお探しなら、オススメです。
小人たちが、楽しく遊び暮らす国ルウィンラーナ。
ラーベスは旅に出て、第一の旅行者となる。
そのことは、「原旅行者」による予言書に記されていた。
ラーベスが持ち帰った手紙を、小人たちは解読しようとするが。
児童書ハイファンタジーや『指輪物語』がお好きな方に、お勧めしたい作品。
最初は、手紙と予言の謎を解くワクワク冒険譚かと思っていたら。
事態は予想以上にのっぴきならない状況でした。
自分たちの数が減っていく現実に目を逸らして、遊び続けるか?
犠牲を出しても、秘密を解くか?
やがて、彼らは“ニンゲン”に出会います。
童話のような文章で綴られる旅路の果ての、胸を締め付けられる結末。
とある星の、人間の世になる前の物語。