夢浮橋 その二十

 尼君は、



「それはとても難しいことです。僧都の御気性は聖と言われる中でも実に真正直で秘密などまったくお持ちになれないのですから、きっと何もかも残りなく大将殿に話しておしまいになるでしょう。誤魔化したところできっとあとですっかり大将殿にわかってしまうでしょう。それに大将殿はおろそかな軽々しい御身分でもございませんし」



 などと言い騒いで、



「世にまたとない強情なお人ですこと」



 と、皆で話し合い、母屋の端に几帳を立てて小君を招き入れた。


 この小君も姫君がここにいるとは聞いてきたものの、子供なので急に話しかけるのも気恥ずかしく思いながらも、



「もう一通ございますお手紙をぜひ差し上げたいのです。僧都のお教えくださったことでは間違いのないことでしたのに、こんなにあやふやだなんて」



 と、伏し目になって言うのだった。

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