夢浮橋 その二十一

 尼君は、



「それは、それは。まあ可愛らしいこと」



 などと言って、



「お手紙を拝見なさるはずの人はこちらにおいでのようですよ。他の者はどういうことか事情がわかりませんが。さ、もっとおっしゃい。小さくていらっしゃるのに、このようなお使いとしておまかせなさるにはそのわけもあるでしょう」



 などと言うが、小君は、



「私のことを分け隔てなさってよそよそしくしていらっしゃるのでは、何をお話申し上げられましょう。赤の他人と思うようになられたのですから、申し上げることもございません。ただこのお手紙を人伝でなく直接お渡しせよと言われて来ました。どうしてもぜひ直接お渡ししたいのです」



 と言うので、尼君は、



「本当におっしゃる通りですよ。やはりこんな冷淡ななさり方はなさいますな。それにしても物の怪のせいか、相当に気味の悪いお心でいらっしゃいますこと」



 と、諭して几帳の側に姫君を押し出したので、姫君は我にもなくぼうっと座っているのだった。

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