総角 その一〇七

 薫の君も匂宮とは思ったより軽薄で不実な人なのだな、いくら何でもこのままになさるまいと思っていたのにと心から中の君が気の毒で責任を感じて匂宮のところへはほとんど行かない。


 宇治へは大君の病状はどうだろうかと絶えずお見舞いの使いを送っている。十一月に入ってからは少しは容態もよいと聞いたが、たまたま公私ともに多忙な時期で五、六日、使いも差し上げられなかったのでどんな容態だろうと急に気がかりになって余儀ない用も多いのを打ち捨てて出かけた。


 祈祷は全快するまで続けるようにと命じたのに大君は回復したと言って阿闍梨も山に帰した。そんなふうで病床にはとても人が少ない。あの老女の弁が例によって出てきて、薫の君に大君の病状を話す。



「どこがどうとお痛みになるところもなく、あまりひどい苦しみでもない御病状なのにお食事をまるでお召し上がりになりません。前々から普通の人と違っていられてとても弱々しい人でしたが、その上匂宮と中の君殿縁組の話が起りまして後はとても心痛なさる様子でして、軽い果物さえ見向きもなさいません。そうしたことが嵩じましたせいか、驚くほどに衰弱してもはやお助かりにもなれない様子です。本当に疎ましいこの身の寿命の長さのせいでこんなに悲しいことを拝見いたしますと、何よりどうかお先に死なせていただきたいと念じているのでございます」



 と言い終えず、身も世もなく泣き沈むのも無理もないのだった。

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