総角 その一〇六

 夕霧の右大臣の姫君、六の君との縁談を母宮の中宮も、



「やはりああした安心な正室をお迎えになってその他にお呼び寄せになりたいお気に入りの人がいるなら呼び、うろうろせずどっしり落ち着いていらっしゃい」



 と言ったが、



「もうしばらくお待ちください。それは少し考えるところがございますので」



 と、匂宮は断ってどうして中の君を召人などにして辛い目を見せられようかなどと思っている。そんな匂宮の本心を中の君は知らないので、月日が経つにつれて物思いばかりに沈んでいるのだった。

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