総角 その一〇五

 中の君は匂宮の訪れない日が重なるにつれ恋しくてならず、あれほど大げさな固い約束をしたのに今さしあがってどうあろうとこのまま途絶えてしまう仲ではないだろうといつも気を取り直しているのだった。使いが、



「返事は今夜のうちにいただいてまいります」



 と言い、女房もよってたかって早くと勧めるので、中の君はただ一言、



 あられふる深山の里は朝夕に

 ながむる空もかきくらしつつ



 とだけ書く。


 それは十月も末のことだった。宇治を訪わないうちにはや一月も過ぎてしまったことよと匂宮は気が気でなく、今夜こそは今夜こそはと思いながら何かと邪魔が入り思うにまかせなかった。今年は五節が十一月上旬に行われる年なので、宮中あたりも何かと賑やかな用が多く、つい取り紛れてしまって匂宮はそんなつもりでもないのに宇治へのご無沙汰が長くなってしまった。あちらではたまらなく待ち遠しくてならない。匂宮はかりそめの情事に気を紛らわしているものの、本当は心の中から中の君のことがひと時も離れたことがないのだった。

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