総角 その一〇二

 うたた寝をしていた中の君は荒々しい風の声に目を覚まして起き上った。山吹や薄紫色の華やかな色合いの着物で寝起きの顔はわざわざ赤くほんのりと染めあげたように艶やかで惚れ惚れするような美しさとあでやかさだ。物思いに沈んだような黒い表情は少しもしないで、



「亡き父宮の夢を見ました。とても心配そうなお顔つきでこのあたりにぼうっとお姿がお見えでしたわ」



 と話す。大君はそれを聞いてますます悲しくなり、



「お亡くなりになって後、どうにかして夢の中でデモお目にかかりたいと思うのに私はまだ一度もお会いしたことがないのですよ」



 と言って二人ともさめざめと泣く。



「この頃は明けても暮れても父宮を思い出して恋しがっているからほのかにでもお姿を現してくださったのだろう。何とかして父宮のおいでになるあの世にお訪ねして行きたい。罪障の深いという女の身だからそれも許されないのだろうか」



 と来世のことまで心配になるのだった。

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